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2007年9月24日 (月)

林住期

「林住期」五木寛之著(幻冬舎)

恥ずかしい話ですが、私は五木寛之さんという文豪の小説を、これまでただの1冊も読んだことがありませんでした。それと、この本は、渡辺淳一さんの「鈍感力」とセットになって書店に並んでいることもあって、ちょっと敬遠しておりました。まだ自分には必要ないな、ということで。

そんなとき、尊敬する先輩からこの本を薦められました。そして読み終わった今、「この年齢で読めて良かったな」と思っています。

Rinju この本の表題ともなっている「林住期(りんじゅうき)」とは、古代インドの「四住期」という考え方で定義された人生の時期の一つだそうです。その4つは左の通りですが、あてはまる年齢は五木さんによる今日的な定義です。つまり、これまで人生のおまけ、余生と考えられてきた50歳から75歳までの時期を「林住期」と位置づけ、人生でもっとも輝く時期と位置づけてはどうだろうか、というのが本書の趣旨です。

しかし、この本が、他のいわゆる「生き方本」と決定的に異なるのは、「だから~しましょう」というのがないことです。「林住期」というのは、とらえ直し、再定義なので、そのあり方は人それぞれ違うので、その人の心の中にしかないということです。だから、五木さんは本書で何度も「50歳で退職して自分のために生きましょう」と書いていますが、同時に「それが現実無理な人が多いことも分かっている」と書いています。
つまり、「林住期」とは心の持ちようだと読み取りました。

人は生きるために働くわけですが、往々にして働くことが主になってしまいがちです。私もつい「何やってんだろ」と思うほど無理を重ねてしまうことがありますが、この本を読んで、多少考えが変わりました。しかし、5年前に読んでも、私はさほどぴんと来なかっただろうと思います。私自身、入院をしたり、親を亡くしたり、子供の進路で悩んだり、この5年はさまざまなことがありました。
そういう経験を経たからこそ、この本の考え方に共感できるのだろうなと思いました。

五木さんも、この本の終わりの方で、幼少期、終戦を朝鮮半島で迎え、国の上層部や大人、親に共感し、失望した経験を語っておられます。そういう、いわば人生の瑕が人生を考えるためのスパイスというか、出汁というか、そんなものになっていくのではないかなと思いました。

40歳未満の方には、あまりおすすめできない本ですが、もしお読みになったとしたら、その感想を書き留めておくと良いのではないでしょうか。40代後半になり、その感想と共に、もう一度この本を読んだとき、いったいどんな感想を持たれるでしょうか。

何年か後に読むと、また違う価値が出てくる--これも本というメディアの良さですね。

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