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2007年9月17日 (月)

なぜ日本人は劣化したか

「なぜ日本人は劣化したか」香山リカ著(講談社新書)

「日本人は日本人論が大好き」とはよく言われることで、「日本」や「日本人」がタイトルに使われている書籍は、本当に多いです。しかし、本書は劣化という強い言葉で表現され、しかも著者は、香山リカさん。テレビ等で温厚なコメントを述べている精神科医です。
いったい、どんな劣化が見られるのか、興味を持って読んでみました。

この本は「活字の劣化」という章で始まります。活字の劣化といっても、もちろん活字がさびて劣化すると言うことではなく、もちろん活字を巡る人間の劣化について述べてあります。とりわけ私にとって衝撃的だったのは、「いまの読者は一息200文字」という編集者の言葉です。一つの内容について200文字以上書いても読まれないし、読んだとしてもクレームが来るのだそうです。15年前は「一息800文字」と言われていたそうですが。

そういえば、首都圏で無料の雑誌として完全に定着したR25という無料雑誌は、1つのコラムを200文字以下にしていることをウリにしていました。雑誌ばかりか、教科書の文字数低減はもはや目を覆うばかりです。昔A5サイズだった国語教科書が、いまではB5になったからといって安心できません。文字量はむしろ減っているのではないでしょうか。
国語教科書の文字数低減がどのように行われてきたか、国語教育学者はぜひ研究して欲しいと思いますが、間違いなく平成4年の学習指導要領で表現活動の時間を長くしたことが影響しているはずです。あれをきっかけに「てぶくろをかいに」「しっぽのやくめ」など優れた教材が、長すぎる、という理由でどんどんなくなっていきました。

この本では、第1章以降さまざまなシーンにおける劣化状況が語られてゆきます。

  • 第2章 モラルの劣化
  • 第3章 劣化していないものは?
  • 第4章 若者の「生きる力」の劣化
  • 第5章 社会の劣化
  • 第6章 排除型社会での「寛容の劣化」

まだ続くのですが、この中の「寛容の劣化」という章は、教育関係者にはぜひ読んで欲しいところです。近頃生徒の問題行動に対して「ゼロ・トレランス(厳罰主義)で臨め」ということが言われています。トレランスとは寛容のことですから、つまり、「悪い奴は容赦するな」ということです。しかし、思春期の問題行動をそのように押さえつけても効果があるとは証明されていない、と香山さんは言います。
中学校時代、いじめ・万引き・喫煙・飲酒・破壊行為など、たいていの悪いことを行ってきた私は、もしゼロ・トレランスで社会から排除されてしまったら、いまここでのんきにブログなど書いてはいないと思うのです。確かに制裁は必要ですが、それは寛容の精神とセットで実施されないと、思春期で心が揺れている子どもたちは救われないと思うのです。

一読して、もう劣化は止められないのか、と暗い気持ちになりました。香山さんはもはや無理であり、滅びるしかない、という識者の言葉を引用しながら、「まずは劣化を認めよう。すべてはそこから」と小さく提案しているのですが、私はやはり希望を持ちたい。

劣化を止めるのは人間の知性です。「もう歳だからもう遅いよ」「性格的に本は苦手だから」「まあ痴性ならあるんですけどね(苦笑)」などと言わず、私は、みんなが自分の頭で考えられる社会を作りたいと思うのです。学校の先生も、国語を好きになる教育を行って欲しいと思います。教科書の文字数も増やしましょう。
できることは、私も手伝いますので。

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