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2007年10月11日 (木)

不肖・宮嶋 メディアのウソ、教えたる

不肖・宮嶋 メディアのウソ、教えたる」宮嶋茂樹著(河出書房新社)

週刊文春を定期的にお読みになっている方なら、「宮嶋茂樹さん」というより、「不肖・宮嶋」といった方がわかりやすいでしょう。朝鮮半島の国家元首が列車でロシアを訪問したときの様子や、小菅の拘置所にいる松本(麻原)容疑者の様子を撮影することに成功するなど、突撃取材で有名なカメラマンです。

このプロカメラマンが、中学生に向けて、メディアとの関わり方、写真家を目指す気構えなどについて書いたのがこの本です。

この本を購入したのは、メディアについて語った本だからではなく、宮嶋さんがカメラマンの仕事を中学生にどう語りかけているのか、というのに興味を持ったからです。いつも権力や、大マスコミ、同業者に対して辛辣な批判を展開している宮嶋さんが、「こうすればカメラマンになれますよ」なんて書くはずがないからです。

ところが、少々乱暴な言葉遣いはあるものの、私の想像に反して(笑)、極めて真っ当な職業論、メディア論が展開されていました。キーワードは、「現場にしか真実はない」です。これを観念的に述べることは誰でもできると思いますが、現場を歩いてきた人にしか書けない、次のような説明をしています。

たとえば被災地でたいへんな思いをしている人たちにカメラを向けるとします。ぱっとカメラを向けられると、100人のうち何人かは反射的に、ふっとほほえみを浮かべてしまうようです。(中略)「家は地震でぺっちゃんこ」という状況でも、子どもたちはカメラがあるところに集まってきます。中にはニコニコした表情を浮かべている子がいます。でもそんな写真を撮っても使われないのです。(中略)災害が起きた(中略)悲惨な状況だ。そんな時、人は悲しい顔をするとは限りません。へらへらと力なく笑う人もいるのです。それが現実であっても、メディアからはそういう現実が浮かび上がってきません。それは現実よりも、メディアの想像力の方が陳腐だからです。

また、有名な報道写真を引き合いに出して、写真というメディアが持つ力についても述べています。「写真はペンよりも強し」と。確かに文章や動画よりも、1枚の写真の方が説得力を持つ場合があります。宮嶋さんは、文章がまったく必要ない報道写真を目指して、日夜努力をされているとのこと。そうした強い思いが、この本のほとんどのページから浮かび上がります。

そして最後に、写真家になる心構えとして「ひとりの効用」について述べています。私はこれまで友だちや先輩、親や兄弟と仲良くしましょう、とかうまく利用しましょう、といったアドバイスは聞いたことがありますが、孤独の重要性をここまで具体的に説いた本には初めて出会いました。

よく若い人は「孤独にだけはなりたくない」「いつでも何でも話せる友だちがそばにいてほしい」と言いますが、人間が成長するには孤独な時期というものが必要なんですよ。これは断言できます。(中略)孤独感にどれだけ耐えられるかで勝負は決まります。「自分がやっていることは間違っているんじゃないか」そんなふうに孤独感にさいなまれた時、(中略)助けてくれるのは誰だと思いますか? それは家族や友だちでもなんでもなく、自分自身からわき出す自信です。

一読して「想像をはるかに超えて面白かった」というのが、感想です。メディアとの関わり、写真の力、孤独の効用など中身が良かったというのもありますが、宮嶋さんが中学生に語るべき言葉を持っていることに感動しました。文字通り命がけで仕事をしている人の言葉は力があるなあ、と。

この本は、河出書房新社から「14歳の世渡り術」というシリーズで出されている本の1つです。世渡り術、というネーミングはどうなんだろう(笑)と思いますが、著者と話題は良く企画したなあと思います。企画だけでなくブックデザインも秀逸です。語注は本文直下に吹き出しで書かれていて親切ですし、難しい漢字にはふりがながあります。国語の教科書を意識したデザインかもしれません。
次は井筒監督の本を読んでみようかなと思っています。

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