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2007年11月22日 (木)

ことばの力

「ことばの力」川崎洋著(岩波ジュニア新書)

川崎さんはたくさんの詩や戯曲を書いてこられたので、作品をお読みになった方も多いことでしょう。数年前まで読売新聞の家庭欄で、子どもの詩を取り上げて評を書いておられたことでも有名です。あたたかく、ユーモラスな文章でした。
書店でこの本を見かけたとき、そのコラムをまとめたものかと思い、手に取ってみましたが、まったく違いました。

この本が刊行されたのは1981年。20年以上も前に書かれたにもかかわらず、この本を買ってみようと思ったのは、目次の項目と構成に惹かれたからです。

  • あいさつのことば
  • おどろいたとき
  • 悪口の息づかい
  • ユーモアのアンテナ
  • うれしいときと悲しいとき
  • 愛のことば
  • 電話でしゃべるとき
  • 方言による表現
  • 自分の考えを伝えるとき

この中で何に惹かれたかといいますと、「おどろいたとき」と「悪口の息づかい」です。驚いたときの言葉や、悪口に「力」があるのでしょうか。

「おどろく」とは、現在では「びっくりする」の意味ですが、昔は「そうであると気づく」という意味もあったそうです。そういえば、「秋きぬと目にはさやかに見えねども、風の音にぞおどろかれぬる」という歌がありました。この「びっくり」と「気づく」の両方の意味で、川崎さんは「おどろく」を取り上げています。
両者に共通するのは感動だと。心を動かすのも、またことばの力というわけです。「驚く」と漢字表記にしていない意味もそこなのでしょう。ご自身の従軍体験と重ねて説明されている部分は、特に説得力がありました。

また「悪口」のところでは、悪口をコレステロールにたとえて悪口も、悪いことばかりではない、と言います。確かに、ネットいじめや言葉の暴力が話題にならぬ日はないですが、その実、現代人の悪口の語彙は非常に少ないです。「おたんこなす」「とんちき」「とうへんぼく」なんてのは、もはや落語の世界でしか聞かなくなりました。語彙が貧弱な分だけ陰湿になってしまうのかなと思います。
川崎さんは、悪口を言い合ったおかげで、より仲良くなれた、コミュニケーションが回復した、という古今東西の事例を引用しながら、「悪口の効用」を説きます。悪口を言い合うお祭りが、日本にもアメリカにもあることはとても興味深く感じました。

このほか、電話に関する記述はもはや時代にそぐわぬところがありますが、コミュニケーションの本質としては少しも古くありません。そして最後の項目である「?」は、この本で川崎さんが言いたかったことの中心が書いてあります。しかし、そこだけ読んでも理解できないでしょう。読み終えた最後に読んで欲しいという意味も込めて記号である「?」を使ったのだろうと思います。もしお読みになるようでしたら、この部分はぜひ最後のおいしい部分としてとっておいてください。

この本を一言で説明するなら、ことばのプロによる、子どもたちへの「ことばとのつきあい方」を説明した本といえるでしょう。ネットやケータイを使う前に、ぜひ読んで欲しいと思います。

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