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2007年11月 5日 (月)

神童

「神童onethree」さそうあきら著(Action comics)

さそうあきらさんというマンガ家を、私はビッグコミック・スピリッツで知りました。花村萬月さんの原作による「犬・犬・犬(ドッグ・ドッグ・ドッグ)」という作品が印象的で、一見何の感情も持たず、暴力的で破壊的でありながら、どこかあやうい主人公を見事に描いていました。セクシャルな表現も多いのですが、決していやらしくなく、人間の精神性を描くのに長けた作家さんという印象でした。

この神童、という作品は、そうした人間性ではなく、音楽をマンガにする、という挑戦的な試みをして、成功したマンガといえます。主人公の成瀬うたは、天才的なピアノの演奏能力と音感を持つ小学生の女の子。一方で野球も大好き。もう一人の主人公、菊名和音(きくなかずお)は、非凡な音感を持つものの、おっとりとした性格が災いし、ピアノがいまひとつ上達しない音大生。二人は、お互いに影響し合って、高め合い、うたの最終演奏で完結します。

私自身、音譜が読めないばかりか、ピアノの隣り合った鍵盤を弾かれても、どちらが高音かわからぬほどの音痴ですが、このお話は楽しめました。音楽がさまざまな奇跡を起こしますが、説得力のある構成なので、本当に音楽が流れているような気がしてくるのです。それもあってか、全部で3巻の文庫ですが、各巻の最後に、場面とそのBGMが記載されています。これは、この音楽を流しながら読んでください、なのか、この音楽を意識して描きました、なのか、意図はわかりません。「BGM」とだけ記載されていて、またそれが音楽マンガ、という演出になっています。

この春に映画化されたようですが、マンガを読んで、あまり見てみたいとは思いませんでした。人の人生を変えてしまうほどのピアノ、というのは、マンガの中で、作者の情報と読者の想像力が一体となるから成立するのであって、映画で具象化されてしまったら、絶対になにがしかの違和感があると思うのです。もっとも、ピアノの音が一切登場しない映画だったとしたら、それはすばらしいですが。

人間の成長と可能性を信じる人には、ぜひお勧めしたい1冊です。
また、蛇足ながら、主要な登場人物の苗字は、横浜線の駅名になっています(笑)。さそうさんは、この沿線の住人なのかなと想像しますが、作者の登場人物への命名に注目してみるのもマンガや物語の楽しみ方の一つです。

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