« サンタクロースってほんとにいるの? | トップページ | 売れないのは誰のせい? »

2007年12月17日 (月)

現代用語の基礎知識2008

Gendai 「現代用語の基礎知識2008」(自由国民社)

毎年この時期になると「流行語大賞」というのが新聞やテレビを賑わします。今年は「(宮崎を)どげんかせんといかん」だそうですが、これをやっているのが、この本の出版社だということを、いったいどれくらいの方がご存じでしょうか。編集者だったときには、毎年購入していたこの本を、今年、久しぶりに購入してみました。なんでも、創刊60周年記念なのだそうです。

創刊は1948年(昭和23年)10月10日。同社が出版していた雑誌「自由國民」の特別号として出版されたのだそうです。この創刊号は、たちまち品切れとなる大ヒットとなり、以後新しい言葉を収録しながら、毎年発行されることになったのだそうです。
考えてみると、昭和23年10月といえば、戦争に負けてたった3年。食うや食わずであった人も多かったことでしょう。それなのに、こうした本を出そうと決意する編集者がいて、しかもそれを買い求める人が多かったことは驚くべきことです。そもそも一定の余裕のある人しか書店に出向かなかったのかもしれませんが、それにしても敗戦から3年で、多くの人に現代用語への知識欲が存在した、ということに素直に感動します。

それから流行語。毎年選定される流行語大賞を、「くだらない」とする評論家も存在しますが、私は単純におもしろいと思ってきました。そして今年の本に掲載された「流行語の60年」は、間違いなく歴史です。庶民の60年を等身大に写し取っているのではないでしょうか。いまでもよく使われ、もはや常套句といっていい「巨人・大鵬・卵焼き」が、まさか私の生まれた年の流行語だったとは知りませんでした。こうした企画を創刊から行っているのですからすごいです。

この本を創刊したのは長谷川国雄という方です。発行元の社長であり、編集者だったそうですが、大変厳しい編集者だったそうで、評論界の泰斗だった草柳大蔵氏が、自由国民社での修業時代の思い出を寄稿しています(創刊50周年の寄稿文を再録)。せっかく作り上げたページに平気で×をつけ、やり直しをさせるのだそうです。厳しいが優しい、そんな方だったようです。

この長谷川さんが、創刊号の冒頭に書いた「編集前記」をご紹介します。全文を書きたいくらい熱のこもった名文です。

記者は創刊号を編集しながら、その時の社会情勢は、その時の用語の中に集約されることを、今更のように痛感した。かりに本号が戦時中に出たとすれば、「八紘一宇」「滅私奉公」式の活字が横行したろう。その代表語は「報国」である。(中略)「報国」に匹敵する今日の代表語は云うまでもなく「民主化」である。民主化の党服を着なければ配給ももらえない状態である。この言語魔術のニューフェース「民主化」をトップに終戦後の新語造語隠語外来語の続出は、激動する社会情勢の姿をそのままに反映して実に凄まじい。(中略)本誌本号のこの試みは、及ばずながら戦後日本の各界の常用語を収録し、一ツの社会常識の水準を示そうとする開墾の一鍬である。(中略)読者諸君もどうか、お気づきの点希望の点を指摘して頂きたい。各方面の協力によってメンケンの向こうを張る「自由國民」版の現代用語年鑑をつくるのがわれわれの目標である。

集英社や朝日新聞社から、似たような辞典や本が出ていましたが、いずれも今年で発行中止となりました。「こういう本が売れるから」ということで、出版界では、柳の下のどじょうを何度でもねらう風潮がありますが、結局は思いの強いところが残る、というところでしょうか。長谷川さんの文章を読む限り、時代を開く壮大な気概を感じます。出版業務に限らず、仕事というのはすべからく社会貢献でなければいけないなと痛感しました。

|

« サンタクロースってほんとにいるの? | トップページ | 売れないのは誰のせい? »

その他の書籍」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/45933236

この記事へのトラックバック一覧です: 現代用語の基礎知識2008:

« サンタクロースってほんとにいるの? | トップページ | 売れないのは誰のせい? »