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2007年12月 6日 (木)

くちぶえ番長

「くちぶえ番長」重松清著(新潮文庫)

「番長」と聞いて、その意味を理解できる小学生はまだいるのでしょうか。私が小学校の時でさえ、すでに番長という言葉は死語だったように記憶しています。
しかし、この本を読んだら、だれもが番長の意味と意義を理解することでしょう。一読後ひさびさに、さわやかな気持ちになれた一冊です。

この本は、小学館の学習雑誌「小学四年生」に掲載された話に、加筆して出版されたようです。全部で14のお話で構成されていますが、連載小説なので、全体としてはひとつながりになっています。文庫版のみ出版された作品とのことで、購入しやすいのも魅力です。少年の葛藤と成長が、見事に描かれているので、国語の教科書に採用する会社も出てくるのではないでしょうか。

この物語は、現在作家になっている中年の「ぼく(ツヨシ)」が、ふるさとで物置を整理していたとき、子どもの頃に書いていた「ひみつノート」を発見するところから始まります。「ぼく」が小学校四年生の時に、マコトが転校してくる。マコトは一輪車と口笛が上手な女の子。けれど、転校の挨拶で「わたし、この学校の番長になる」と宣言するのです。一方の「ぼく」は、引っ込み思案の優等生。友だちや上級生に対して、いろいろと思うところがあっても、なかなか言動や行動に移せない、そんな子どもです。

こんな二人の主人公が、さまざまな人々と関わり合い、「サイコーの相棒」になっていくのですが、ここで語られるエピソードのひとつひとつが、とてもリアルに感じられました。読者である私自身も「ぼく」同様、実家の物置で少年時代のノートを見つけたような気持ちにさせてもらいました。
実はこの本は、中学1年生の娘に「クラスで割と人気の本だよ」といって、紹介されたものです。大人が描く「子どもの気持ち」は、ノスタルジーが入る分、得てして子どもには理解されないようですが、少なくともこの本は、この間まで小学生だった人たちからの共感が得られているようです。親子の会話のきっかけになりました。

重松さんは、こうした児童文学以外の作品も数多く上梓されていますが、私は、少年の気持ちを書いたら日本一の作家だと感じています。ちょっと前に「かっぽん屋」という本を読み「確かにこういう気持ちになったよなあ」と思うシーンが何度もありましたが、この本を読んで、そう確信しました。最近は、Xbox 360用のゲームソフトの原作を書かれたということで話題になっていますが、もうちょっとこっち方面(児童文学)も、がんばってほしいなあと思うのです。

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