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2007年12月20日 (木)

売れないのは誰のせい?

「売れないのは誰のせい?最新マーケティング入門」山本直人著(新潮新書)

書店でビジネス書のコーナーに行くと、自己啓発本、研修のノウハウ本、企画書本などとともに、マーケティングの本がずらっと並んでいます。私自身、営業系の仕事なので、マーケティングに関する本は何冊か読みました。しかし、一度として役に立ったことがありません。「マーケティング」とか「コンセプト」とか「パラダイム」とか、インチキそうなカタカナ語が羅列されていて、中身がどうにも頭に入らなかったからです。

それなのになぜこの本を手にしたかというと、あとがきが信用できそうだったからです。著者である山本さんの祖母が、93歳になって突然「オルガンが欲しい」と言い出し、手に入れて喜んだというエピソードから、次のように語っています。

買い手の願いと、作り手の想いをうまく結びつけられれば、より質の高い豊かさを実現できる。マーケティングとはそのための知恵だと思っている。それは単に売上を高める知恵ではなく、作り手、売り手、買い手の気持ちがより満たされるようになる知恵である。そうやって、世の中によりよい循環を作り出せればと思いながら本書の筆を進めていた。

このブログでも再々書いて参りましたが、私は、仕事というのはある部分、生き方の反映であると思います。このあとがきを読んで、著者の山本さんは、きっと私と同じ思いを持った方のように思えたのです。そしてその判断は間違っていませんでした。

まず用語や現象を解説をするマーケティング本が少なくない中で、この本は、まず現状認識を変えよ、と説きます。つまり、バブルまでの日本には、実際のところマーケティングは必要なく、頑張ればとりあえず何とかなった時代だったといいます。取引銀行を選定した理由を事例として、これまでは本当の意味での競争がなかったと。

それから現状のとらえ方も非常に面白いです。たとえば「ブランド」という言葉。コンビニでお茶を買うとき、120円のお茶と147円の有名メーカのお茶が並んでいるとき、147円を選ぶ気持ちを支えるのがブランドだと言います。非常にわかりやすいたとえだと思いました。
また、ビジネス誌などでは「多品種少量生産の時代になった」とよく言われますが、山本さんはその理由を「日本人の種類が増えたから」と説明します。日本人に物が行き渡った80年代から、「典型的な日本人」「典型的な家族」というのが消失し始め、90年代後半に現れた「母子のみ登場する自動車CM」が、世の中に何の違和感もなく受け入れられたことがその証拠といいます。もちろん、CMやテレビドラマが必ずしも世相の反映でないことは本書でも断られていますが、それにしても種類が増えたという指摘は、私にはぐっと来ました。

最終的に私が最も賛同したのは、「ものより心、という風潮があるが、ものと心を対立軸としてとらえるのはそろそろやめにしたらどうか」という主張です。冒頭のおばあちゃんの話にあるように、ものが心を豊かにすることは確実にあります。実際、私も先日部員から、プレゼントをもらいました。憎まれることはあっても、感謝されることなど何一つしてはいないのですが、それでも気持ちをもので表してもらったことは、単純にうれしいものです。

手に入れたら、幸せになる商品。商品は物であったり、サービスであったりさまざまですが、商品を生み出す立場の末席を汚すものとして、少しでもそれに近づけたらいいなと実感しました。読後すがすがしい気持ちになれた一冊です。

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