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2007年12月27日 (木)

経験を盗め

「経験を盗め文化を楽しむ編」糸井重里著(中公文庫)

記憶の専門家によると、人間の脳みそは、経験した全てのことを「記録」しているのだそうです。記録を再構成し、「記憶」として認識するため、経験を積めば積むほど脳みそは活性化するのだとか。

読書というのは、一般に疑似体験の一種ですが、この本は「経験を盗め」とあるように、糸井さんが様々な分野の専門家と話す中で、うんちくを獲得していくのですが、読んでいるこちらも一緒に獲得できるというわけです。いわば、疑似体験の疑似体験ですね。

経験を盗め、としているわけを、糸井さんはこの本の冒頭の「口上」において次のように説明しています。

ふつうに暮らしている人が、一生のうちに何人の他人の出会うのかを数えてみたら、おそらくものすごい数になるに違いない。ただ、いくら人数が多くても、会える人のほとんどは「自分と似たような経験をしてきた人」だったりするものである。(中略)同じような経験をしてきた、同じような種類の人々と、互いを語り合っているのだ。だから、むかしから、先人たちは「旅に出ろ」「書を読め」と教えようとしたのだと思う。

確かにそうです。私たちは、自然と似たような人としかつきあわなくなっているような気がします。
この本で糸井さんが話をする方々は、本当に様々な分野の専門家です。今では一般的となった「B級グルメ」という言葉(考え方)を発明した人、お墓の専門家、お祭りの評論家、日記文学の専門家、花火の専門家、トイレの専門家など・・・。トイレに専門家がいるなんて、初めて知りました。

ただ、そうした専門家に聞き手がインタビューするような企画は、多くの雑誌で行われているし、実際、その手の本も多数出ています。この本が秀逸なのは、必ずその分野の専門家を2名、しかも視点の異なる専門家を呼んで、鼎談をしていることです。

男は《歴史の垢》を愛でる
  出久根達郎氏(作家・古書店主)
  仲畑貴志氏(コピーライター・無類の骨董好き)

古くて新しい花火
  冴木一馬氏(報道カメラマン・花火撮影にこだわり)
  宮川めぐみ氏(花火製造会社の社員)

お祭り進化論
  みうらじゅん氏(漫画家・エッセイストなど)
  森田三郎氏(文化人類学者・甲南大学教授)

こうした組み合わせよって、厚みのある、おもしろい鼎談とになっています。糸井さん+専門家+写真家、という組み合わせがもっとも多いのですが、確かにこれはあるなあと思います。その道の専門家は、カメラマンから客観的な視点をもらうことで新たな発見があるでしょうし、カメラマンは専門家の本音が聞けるので、メリットがあることでしょう。
さらにこの鼎談が、婦人公論という雑誌の企画であったということも興味深いです。つまり女性向け雑誌の企画ですから、ふつうは話題を選ぶでしょうに、トイレだのお祭りだの・・・鼎談の企画会議で、糸井さんと編集者のやりとりを想像すると、その点でも楽しく読めました。

内容はもとより、組み合わせの妙も楽しめる一冊です。

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