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2008年1月 7日 (月)

統計学がわかる

「統計学がわかる-ハンバーガーショップでむりなく学ぶ、やさしく楽しい統計学-」向後千春・冨永敦子著(技術評論社)

仕事柄、さまざまな調査や研究にかかわることが多くなりました。たいていは、商品開発や市場調査のためのものですが、企業が業務として取り組む以上、それなりの成果を上げねばなりません。ところが、ある事象とある事象に差がある、とか差がない、ということをきちんと述べようとすると、案外難しいということがわかりました。実際の社会現象は、数学や物理のテストのように、条件統制がなかなか難しいからです。

調べたところ、「統計学」という学問を学べば、どうやらそうしたノウハウが身に付くらしいことはわかりました。しかし、書店で売っている統計学の本は、なにやら数式がずらずら書いてあり、読む気がしません。

そんなとき、教育工学会でこの本の著者である向後先生&冨永さんから紹介いただいたのが本書です。紹介いただいてすぐに購入し、すぐに読み始めたにもかかわらず、ブログでの紹介が新 年になってしまいました。遅くなった理由は、読んだ内容を把握することはできたものの、他の人に説明するレベルまで理解できなかったからです(号泣)。「お正月に腰を据えて理解しよう」と思い頑張ったのですが、だめでした。
理解できなかったことがなぜ悲しいかというと、本書は、難しい統計学について、本当にわかりやすく説明しているからです。「わかりやすいのに理解できない」とは、にわかには信じられないでしょうけれど、そういうこともあるのだと考えさせられました。

本書は、そのサブタイトルにある通り、ハンバーガーショップを舞台に、お客から出される疑問や経営上の課題について、統計学の手法を用いて解決する、というスタイルで執筆されています。話題の選定と、難易度の配置の仕方が絶妙で、統計学に関する基礎的な知識を、段階を踏んで、無理なく習得することができるようになっています。
たとえば第1章は「平均と分散」。平均値、度数分布、標準偏差といった基礎的なところが、第2章では、求めたい数値がどのあたりにあるか(信頼区間)を推定する手法が、ハンバーガーショップのフライドポテトを話題として説明されています。このあたりまでは、私でも十分理解できました。
章と章の間には、具体的なコラムが用意されていて、章の中身が多面的に理解できるようになっています。第4章の終わりにある「なぜ新聞では有意差を示さないの?」というコラムは、以前紹介した「データの罠」という本の話題とも重なっているので、合わせて読むと、よりよく理解できるかと思います。

とはいいながら、数学の基礎知識のない私は、第4章の「t検定」の説明当たりから、つまづいてしまいます。説明はわかりやすいので、t検定の手法と目的は理解できるものの、実際の問題を前にして、自分で分析できるかというと、甚だ自信がありません。さらに、第6章7章あたりで説明されている「分散分析」になると、完全にお手上げ。じっくり読んでも、中身は理解できませんでした。とはいえ「この手法を使えば、こういうことが明らかになる」ということだけは理解できたので、よかったです。
もともと本書は、大学で使うWeb教材として開発された「ハンバーガーショップで学ぶ楽しい統計学」に加筆・再編集したものだそうです。確かに、各章のおわりに演習問題があるなど、教科書的意味合いが強いです。私も向後先生に教わりながらならば、なんとか理解できたのかなあ、などと考えて自分を慰めています。

2008年最初に紹介する書籍として、この本を選んだのは、まさに私が分からなかった本だからです。話したからといって必ずしも伝わるわけではないように、読んでも分からない本というのは、確実に存在します。むしろその方が多いのかもしれません。読み手の問題だったり、書き手の問題だったり、その原因はさまざまでしょう。けれど、分からないからとMaitta いって、その本がその人にとって無価値かといえばそうではありません。世の中には分からないから面白いということがあります。学ぶ楽しさは、分からないことにこそあると私は思います。

新年にふさわしい一冊として、わかりやすいが難しいこの本をご紹介させていただきました。

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