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2008年1月31日 (木)

THE MANZAI 4

「THE MANZAI 4」あさのあつこ著(ジャイブピュアフル文庫)

あさのさんといえば、野球少年の葛藤と友情を描いた「バッテリー」という作品で有名な作家です。昨夏映画化されたので、ご存じの方も多いことでしょう。「バッテリー」に登場する主人公は、孤高の天才少年でしたが、本書の主人公は、目立たないことを旨とするおとなしい少年(瀬田歩)と、さわやかでお笑い好きなサッカー少年(秋本貴史)のお話です。

本書は「THE MANZAI 」となっているように、シリーズ4番目の物語です。「1」は、歩が秋本たちの通う「湊三中」に転校してくるところから始まります。交通事故で父と姉をいっぺんに亡くした心の傷から、人との関わりを避けようとしていた歩ですが、ある日漫才好きの秋本に「スカウト」され、学園祭で漫才を披露する羽目に・・・そして「2」「3」では、この漫才を軸に、恋愛や親との葛藤などを経て、次第に成長していきます。タイトルが「THE MANZAI」となっているにもかかわらず、主人公の歩は、漫才が嫌いであり、いつも秋本のせいで「しかたなく」「いやいや」「しらないうちに」漫才をやることになってしまう、というのも興味深いところです。

「バッテリー」は、私も全巻読みましたが、野球というチームスポーツの中にありながら、孤高を保つ主人公が痛々しくて、どうにも感情移入ができませんでした。その点、本書の歩は、相方の秋本の強引さに拒否反応を示しながらも、時折見せる大人びた対応に、自分にない何かを感じます。

ぼくは、秋本のことを何もわかっていない。秋本はぼくに、陽気でおもしろくて妙に頼りがいがあるわりに情けない、そんな面しか見せていないのだ。もっと奥があるのだろう。まるで異質の面があるのだろう。ぼくは、いつかそれに触れることができるのだろうか。
一番近くにいるのに一番分からない相手。

親しい友だちでも、恋人でも、ふと気がつくと、何も分かっていないことに愕然とすることはだれでもあることでしょう。歩は、クラスメイトの恋愛の危機とそれへの対応から、秋本が単純に陽気な少年でないことに気づきます。つまり、自分が友だちのことを分かっていないことが分かるのです。

あさのさんは、ローティーン男子の気持ちを描くのがとても上手です。私自身、中学校時代、先生に理解してもらえず、自分の真意とは別に反抗的な態度をとり続けていたことがあるので、彼らの一見ねじ曲がった気持ちがよく分かります。この物語で描かれる少年の心理は、抜群のリアリティです。あさのさんは、女性ですから当然経験したことはないはずで、どうやって取材したのでしょうか。本当に疑問です。本書はそうした少年の心理描写だけでも読む価値があると思いました。

「他者理解」。この物語のテーマを一言で言えばそうなるでしょう。ローティーンのお子さんとかかわる先生や親御さんに、ぜひお薦めしたい一冊です。

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