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2008年3月 6日 (木)

「分かりやすい表現」の技術

「『分かりやすい表現』の技術」藤沢晃治著(講談社ブルーバックス)

「分かりやすい表現」というのは、ここ数年、私が追い求めているテーマです。電子メールが普及したおかげで、伝えたい用件をメールで送る、というお作法はかなり一般化しましたが、それでコミュニケーションが深まったかというと、そうでもありません。私の経験に限って言えば、かえって誤解が増えたような気がします。
それには様々な原因があると思いますが、私たちの伝える技術がまだまだ未熟だから、ということがあるのではないでしょうか。本書は、伝える技術に特化して説明されているので、かなり参考になりました。

そもそも「分かる」とか「分かりやすい」とはどういうことでしょうか。私が、このブログを続けているのも、その答えを体験的に導き出せないか、と思ったからでした。その一方「そんな主観的なことは、定義できないよな」とも思っていましたが、本書では、そのあたり第2章において明確に説明しています。

「分かりやすい」とは「分かっている」状態に移行しやすいという意味である。
「分かっている」状態とは、「情報が脳内整理棚の一区画にしまわれている」状態である。

つまり分かりやすい表現とは、「受け手の脳内整理棚にしまいやすいように情報を送ること」に、つきます。送られてくる情報の構造があらかじめはっきりしていれば、整理棚にしまいやすいことになります。

「脳内整理棚」とは、記憶の仕組みの比喩的表現で、いわば一時的な記憶を定着させる場所のことですが、情報があらかじめ、小分けにされて提示されれば、「棚」に収納しやすいというわけです。文字通り「分かる」とは「分ける」ことから始まる、と藤沢さんは書いています。
Rei 分けてわかりやすい例として、藤沢さんはまず左のような例を挙げています。右ページの例は、文章に書かれた要素を分解し、表にまとめたもの。左ページの例は、数行にわたる表を一行ごとに網掛け処理を施したものです。いずれも、分けて分かりやすくなった例です。
こうした表現上の工夫だけでなく、1冊のマニュアルを「基礎編」「応用編」と分けることで全体として分かりやすいものにするといった、書籍構成上の工夫も紹介されています。本書では、分かりやすい例の解説は、分だけでなく具体例がとともに説明されているので、とても理解しやすいと感じました。もっとも「分かりやすい表現の技術」の本自体が分かりにくかったら、売れませんよね。

本書の分かりやすさは、それだけではありません。第3章では「分かりにくい表現」の主犯たち、と題して全部で16もの犯人を挙げています。そしてそれらへの対応ルールも。そして最後の第4章では、「分かりやすい表現」のルール・ブック、として全部で16ものルールが紹介されています。ここもルールだけではなく、その間違いやすい表現のチェックができる、チェックリストがついています。

紹介されている表現例は、どれもすぐに使えそうなものばかりです。もし本書を読む時間があまりないとおっしゃる方がいれば、気になる図版をざっと探し、自分の興味の向きに合致した説明方法を見つける、という方法をおすすめします。その方法が気に入ったら試してみる、というのが、本書とのよりよいつきあい方なのかなあと思いました。
私もいくつかのプレゼン資料において、本書のアイディアを使わせてもらいました。本棚にしまわず、いつも机の近くに置いておく本なのかもしれません。

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