« 魂を養う教育 悪から学ぶ教育 | トップページ | 「分かりやすい表現」の技術 »

2008年3月 3日 (月)

ついていったらこうなった

キャッチセールス潜入ルポついていったらこうなった」多田文明著(彩図社)

まもなく4月。学校や勤務先を新たにする方も多いことでしょう。新たな出会いは、新鮮でとても楽しみな一方で、多少の不安もあります。このため残念ながら、そうした不安につけ込んでくる人たちがいるようです。
本書は、街頭や電話、チラシ配布などにより、悪質な勧誘を繰り返す商売をしている人たちに対し、断らずついていったり、自分から連絡したりしたらどうなるか、という体験ルポです。

私自身、大学に入ったとき、ある宗教団体の勧誘をかなりしつこく受けました。大学に入って、だれ一人知り合いがいないとき、たとえ宗教の勧誘であったとしても、親しく話しかけてくれ、こちらの話を聞いてくれるので、うれしかったと記憶しています。
著者の多田さんも、学生時代に「手相を勉強しています。よかったら見せてもらえませんか」という勧誘を受けたことが、この本を書いたきっかけだったそうです。先祖の因縁話と名前の画数でさんざん脅され、逃げるように帰ってきて、一つの教訓を得たと言います。

教訓:因縁話などを持ち出し、人を脅かす団体は要注意である。その後、怯えきった相手に差し出す救いの手こそ、彼らのねらいなのだ。

本書は、このように「体験→教訓」という流れで構成されています。この手相の事例を含め、全部で20の事例と、そこから著者が得た教訓が掲載されているのですが、毎回「難を逃れた」という話ではありません。つまり多田さん自身、こうした商法の被害者になったことがあるのです。これが本書に説得力を与えています。

多田さんは、ライターのみで生活しているのではなく、エキストラをしながら雑誌に寄稿したり、何冊かの本を書いている方だそうです。当然、毎日の生活は不安定。独身で、髪の毛に不安を抱えているとのこと。それゆえ次のような組織にだまされたり、だまされそうになったりします。

  • 「あなたの原稿が本になる」と、共同出版をもちかけ、実際には本の制作費の2倍くらいの料金を請求する「出版社」
  • 髪の悩みに無料で「ヘアケアアドバイス」をしてくれる、といいながら、高額な健康器具を売りつけようとする「会社」
  • 「必ず返信が届く」といいながら、返事ごとに料金を請求する「ITサービス会社」

これらの組織は、会社を名乗っているものの、実際にはそうでない場合が多いことでしょう。とはいえ、このような商法は、依然としてはびこっています。それは、私たちみんなが不安や劣等感をもっており、その感情とうまく向き合えていないからではないでしょうか。

多田さんは、自らの劣等感をさらしながら、そのことを読者に教えてくれます。20の事例が終わった後、悪質商法を見抜き、対処する方法が書かれています。そしてなにより、本書で取り上げた1社から、実際に訴えを起こされ、被告人になった経験「訴えられたら、こうなった」も掲載されています。この中身も、悪質商法を考える一助になることでしょう。

こうした商法は、ネット社会の到来とともに、子どもたちにも差し迫った問題といえます。子どもたちの悩みは、大人よりも大きい場合が多いので、より十分なケアが必要です。本書に書かれていることは、現代社会を生きる大人として、得ておかなければならない情報ではないかと思いました。

|

« 魂を養う教育 悪から学ぶ教育 | トップページ | 「分かりやすい表現」の技術 »

ノンフィクション」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/45933257

この記事へのトラックバック一覧です: ついていったらこうなった:

« 魂を養う教育 悪から学ぶ教育 | トップページ | 「分かりやすい表現」の技術 »