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2008年3月10日 (月)

漫画ノート

「漫画ノート」いしかわじゅん著(バシリコ)

いやー、やっと出てくれました。漫画ノート。もう数年前から、出るぞ、出るぞ、と言われていたのに、ずっと出なかったので、もう出ないと思っていました。1月に発売されてすぐ購入しようとしたのですが、売り切れていて、2月上旬にようやく購入することができました。
あ、独りで盛り上がって恐縮です。この本は、以前紹介した漫画の時間の続編で、現役漫画家による漫画評論、という興味深い本です。

現役の漫画家が、漫画について評論するということがいかに危険なことかは、前回書きました。にもかかわらずその続編を作るのは、漫画について書かずにはいられない、いしかわさんの情動があるのでしょう。448ページという分厚さは、その現れだと思います。実際いしかわさんも、書きためた原稿をこの本にまとめるに当たり「何度も何度もリライトした」と、あとがきに書いています。

それが忍ばれるのは、前回とまったく違う、本の構成です。前回は、熱血漫画評論が冒頭にありましたが、今回は前書きもなく、いきなり本の評論から始まります。評論は6つの章に分かれて展開します。

  • 第1章 漫画は冒険する
  • 第2章 BSマンガ夜話
  • 第3章 愛の漫画
  • 第4章 彼らの肖像
  • 第5章 秘密の花園
  • 第6章 美しい物語

それぞれの章の終わりに、総括するかのような短い評論(というかエッセイ)が配置されています。これが非常にいい感じで、特に私が気に入ったのは、第3章の終わりにある「科学を描く」と第4章の終わりにある「あだち充の世界」の2編です。
「科学を描く」では、手塚治虫登場後から、最近の漫画「攻殻機動隊」までを取り上げながら、漫画が科学をどう描いてきたかを述べています。そして最後に、今後の漫画は何を描くのかについても。

漫画の中にコンピュータが出始めたのは、早い。(中略)SFなどという概念が一般に浸透するずっと前から、漫画の中では、コンピュータが活躍していた。初期のころは、たいていは発展あるいは破壊をおこなう(中略)万能のブラックボックスとして。そのうち、未来への希望として。そしてついには、絶望の象徴として。おそらく絶望の向こうを覗き込む作業は、既に始まっていると思うが、まだそれをあからさまに表している漫画は見ていない。

漫画が、まさに世の中とともにあるのだということを端的に表した文章だと思いました。
また「あだち充の世界」では、デビューした70年代から現代までの作風を丹念に追い、現在の作風が確立し、どのように読者に受け入れられていったのかを明らかにしています。私は、あだちさんが、初期の頃熱血青春ものを劇画風のタッチで描いていたことを初めて知りました。

前作同様、全編に漫画と、漫画家に対する愛情のあふれる評論で漫画を読むのをさらに楽しくしてくれる本です。この本を締めくくる一編は「吾妻ひでおの希望」。一時期いしかわさんとライバルと言われていた漫画家です。
この愛情あふれる一冊を紹介するのに、私も何度もリライトしました。

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