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2008年3月17日 (月)

有効期限の過ぎた亭主と賞味期限の切れた女房

「有効期限の過ぎた亭主と賞味期限の切れた女房」綾小路きみまろ著(PHP文庫)

先日新幹線に乗る仕事があったのですが、本や雑誌が鞄に1冊も入っていないことに気づきましたcoldsweats02以前にも書きましたが、私は活字中毒の傾向があります。「これから数時間、読む本が何もない」と非常に焦り、乗車直前にキオスクでこの本を購入しました。

実のところ時間つぶしで購入したのですが、これが意外と興味深い本でした。

私は学生時代、落語研究会に入りたいと思うほど落語が好きでした。とはいえ、落語は都会の芸です。田舎住まいの私は、もっぱら本を通じて落語に親しんでいました。ところが専門家は「落語は話芸。本でよさが伝わるわけがない」とおっしゃいます。私も時々は寄席に行くので、ライブの良さはもちろん知っていますが、本には本の良さがあると思っています。

本書もまさにそうした類の本だと思いました。
綾小路さんの話芸は、テレビでしか見たことはありませんが、日本語の文末決定性を逆手に取り、それまでの文脈に続けて、聴衆が予想しないオチにつなげる、というものです。

ここまでやってこれたのは、誰のおかげでもございません、ここにおいでくださいました、おひとりおひとりのお客様の前でやっている、私の力です。

ライブの冒頭でこの話題ですから、聴衆は芸人からの感謝の言葉を期待しますが、それを見事に裏切り、笑いにつなげるという芸です。これはもちろん、生で聞いた方が面白いでしょう。実際私も「にやり」とはしましたが、爆笑することはできませんでした。それは、本では読んでいるうちにオチが視界に入ってしまうからです。
しかしそれでも、綾小路さんの話芸の魅力は伝わりますし、ギャグの構造もわかります。本を読むことによって、かえってライブが見たくなる、という効果も生んでいます。もしかして、CDを買ってもらおうという作戦なのかもしれませんhappy01

それからこの本の魅力はもう一つあります。それは、綾小路さんの生い立ちから、現在までが本人の言葉で書かれていることです。本書は第1章~7章で構成されているのですが、1,3,5,7章が漫談、2,4,6章が人生トーク、という構成となっています。
第2章は「生い立ちの記 キムタクと瓜二つに生まれてというタイトル。サブタイトルの痛いギャグが綾小路さんらしいですが、この部分はライブの文字化ではなく、きっとお書きになった部分でしょう。4,6章も含めて、この人生トークは非常に読ませます。

具体的な内容については、ぜひ本書をお読みいただくとして、印象的なのは、綾小路さんが、何度もブレイクのチャンスがありながら、自らの芸の形にこだわり続けたために、遠回りをしてきた、という事実です。彼の芸が、通常の漫談と異なり、司会者のようでもあり、アナウンサーのようでもあるのはそれまでの経験が背景となっています。自分の信じた道をひたすら歩み、ついに綾小路さんにしかできない芸、誰にも似ていない芸を身につけたわけです。

お笑いの本に、そうしたシリアスな意味を求めてはいけないのでしょうけれど、私にはその部分が最も印象に残りました。たまにはキオスクで本を買ってみるものだなとも思いました。

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