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2008年4月21日 (月)

ラブホテル進化論

「ラブホテル進化論」金 益見著(文春新書)

週刊文春で、この本が出ることを知ったとき、ちょっといやな感じがしました。大学院生、しかもこんな美人が、よりによってラブホテルに関する論文を書いた、という事実が、いかにもおじさんのスケベ心をねらったものに思われ、素直に読む気になれなかったのです。

ところが、先日書店に山積みされているのをちょっと立ち読みして、考えが大きく変わりました。これは、いろいろな意味で読む価値のある本だと理解できたからです。

本書は、「はじめに」がなければ、日本文化をラブホテルという側面から照射した、ごく普通の新書といえるでしょう。逆に言えば「はじめに」はそれほど重要です。私はここを読んで本書を買うことにしました。

「はじめに」には、ラブホテルspaについての研究動機とともに、本書を書くことになった経緯が書いてあります。この中で私が重要だと思うのが、金さんが自信満々書き上げた卒業論文が、資料を貸してくれた先行研究者に切り捨てられたときのエピソードです。

研究会の飲み会で、先生にお会いすることができた。その時言われた言葉は、今でも忘れられない。「君の卒論、私の書いたものをまとめただけでつまらなかったけど、大学院に進めて良かったね」私は、身体中が熱くなって、穴があれば本当に入りたくなった。私のやっていたことは、研究ではなく、資料集めと、資料整理だったのだ。

金さんの卒業論文は、友人の間でも評判で担当教授からも褒められて、有頂天になっているときの言葉だったそうです。さぞかしショックだったことでしょう。それでもそこから立ち直り、本書のポイントでもある、ラブホテル経営者に直接話を聞ける機会を得て、博士論文や本書にまとめるのですから立派です。
そういうわけで、本書の「はじめに」は、特にこれから論文を書こうとしている大学生や、編集者を目指そうとしている方に、ぜひ読んでもらいたいと思います。研究とは何か調べるとはどういうことか、具体的に理解できることでしょう。

以上で本書の紹介を終えても良いのですが、それではあまりに著者に失礼だと思うのでcoldsweats01、中身のことも少し紹介します。なんといっても本書の白眉は、調査活動です。週刊誌を丹念に調べる中で、歴史的経緯を把握し、その上で、編集者や漫画家にもインタビューしています。また、なかなか会うことのできないラブホテルの経営者に面会することで、そうしたメディアに出てこない部分に光を当てることに成功しています。

そして性風俗との関わりや、非合法な世界についてもちゃんと調べています。きれい事だけでは文化は語れませんから、当然のアプローチとはいえ、女性としては難しい部分も多かったろうことは容易に想像できます。これはもはや研究と言うより、ジャーナリズムと言っても差し支えないかも知れません。初版後10日ほどで再版になっているのも頷けます。

私は仕事柄、こういう人が商品やイベントの企画をしたらすばらしいだろうなと、つい思ってしまいました。一読後、なんだか力をもらった気がします。

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