« ブックブログ1周年 | トップページ | 村上春樹、河合隼雄に会いにいく »

2008年4月28日 (月)

生き方上手 1

「生き方上手 1」日野原重明著(ユーリーグ)

この本は、ミリオンセラーとなった「生き方上手」の文庫版です。この本が非常に売れていた5年前、日野原さんをテレビや新聞などでよくお見かけしました。その柔らかな話しぶりと、含蓄のある言葉に感銘を受けたものです。

一昨年、日野原さんと偶然同じ飛行機に乗り合わせたことがあるのですが、このとき、非常に驚きました。ご高齢かつ大病院の名誉院長なのに、お付きの人を侍らせず、大きなバッグを手に、独りですたすたと飛行機に乗られたのです。失礼を承知で、バッグの中身をのぞかせていただくと、そこにはびっしりと本や書類が入っていましたsign01 推定重量は10kg以上。その姿は、どうみても60歳前後にしか見えず、しかも存在感を放っていました。

日野原先生(あえてこのように呼ばせていただきます)は、飛行機の中で、やはり本を読まれていました。私も負けじと本を読み出したのですが、ほどなく爆睡。着陸し、目覚めたときも読んでおられたので、きっとずっと読書をされていたのでしょう。先生の半分以下の年齢なのに、惰眠をむさぼっていた私は恥ずかしい限りです。
飛行機をお降りになるときも、客室乗務員からの介助の申し出を笑顔で断り、重いバッグを手に、またすたすたと降りて行かれました。後光が差すという言葉がありますが、先生の一連の立ち居振る舞いは、まさにそんな感じでした。

このときの経験が強烈だったので、今回の文庫化を知りすぐに本書を購入しました。私は、本を読むとき、著者の実際の姿に思いを馳せることなどないのですが、日野原先生の場合は、実際にお見かけしたことで、本書の文章の一つ一つを、すっと受け取ることができました。

本書はもう、どこをとっても紹介したいフレーズばかりなのですが、第6章の「死は終わりではない」がもっとも心に響きました。「死への準備教育」というのは、上智大学のアルフォンス・デーケンさんが提唱したもので、先日紹介した曽野綾子さんの著作でも提唱されています。日野原先生は、本書で死の教育を主張されるだけでなく、実際に行動(教育)されています。

聖路加看護大学の授業で、ちょっとショッキングなシミュレーションをしてみたことがあります。「いま、あなたのお母さんが亡くなった。お母さんの知り合いにその死を伝えなければならない」という設定で、死亡通知の作文を書かせてみたのです。(中略)書き終えたものをみんなの前で読み始めるころには、全員が目に涙をいっぱいためていました。

私は小学校や中学校にシミュレーターという蘇生術を学ぶための人形を持ち込みたいと思っています。心臓マッサージや人工呼吸がきちんとできたとき、シミュレーターの人形はパッと目を開け、息を吹き返したことを知らせてくれます。(中略)人を救える技術を身につけているというプライドが持てれば、人を傷つけたり、ましてや殺すようなことはできなくなるだろうと思うのです。

私も人生の半ばを過ぎて、終末の時にリアリティ感じることができるようになりました。それが本書に感動した最も大きな理由なのかも知れません。日野原先生も、「おわりに」で、医学部に入った直後結核になり、1年間を棒に振った経験を書いておられます。その経験のおかげで、重篤な患者の思いに気づくことができたと。まことに、人生にムダな経験などないのだと実感させられます。

仕事や人間関係に疲れ、気力が萎えたときに思い出して読んでみたい一冊です。

|

« ブックブログ1周年 | トップページ | 村上春樹、河合隼雄に会いにいく »

エッセイ」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/45933275

この記事へのトラックバック一覧です: 生き方上手 1:

« ブックブログ1周年 | トップページ | 村上春樹、河合隼雄に会いにいく »