« 「ニッポン社会」入門 | トップページ | 富士山頂 »

2008年5月15日 (木)

知のソフトウェア

「知のソフトウェア情報のインプット&アウトプット」立花隆著(講談社現代新書)

近頃書店のビジネス書のコーナーに行くと、「企画書のまとめ方」「説得力のある話し方」「情報整理の仕方」といった、知的活動にまつわる「○○の仕方」の本が花盛りです。困っている人が多いと言うことでしょう。私もそうした本を幾冊か読みました。役に立った部分もありましたが、首をひねってしまうことの方が多かったような気がします。

本書は、「知の巨人」と言われる立花さんが、自ら実践している知的活動の技法を紹介した本です。この本が、「○○の仕方」本と大きく異なるのは、「最適な一般論は存在しないので、自分なりの方法を見つけて欲しい」と言い切っているところです。

本書は、サブタイトルに「情報のインプット&アウトプット」とあるように、情報の収集方法とその表現方法について記載されています。この手の本の多くが、表現技法について書かれているのに対して、立花さんは情報収集法と情報整理法について多くのページを割いています。

新聞記事のスクラップ方法は、試行錯誤の過程とともに解説されている上、立花さんが実際に使っているスクラップブックと整理棚が、写真やイラストで示されているので分かりやすいです。また、雑誌記事の整理法の記事で注目すべきは、雑誌のアーカイブで有名な大宅壮一文庫の価値と利用法について書かれた部分です。独特のインデックスとその意義について紹介されていて、大宅文庫を情報整理の側面からも価値づけています。この新聞記事・雑誌記事整理法の記事は、論文を書こうとする学生さんにも参考になると思いました。

それから本の探し方と読み方についての記事も面白いです。まず図書館は利用しないといいます。それは書き込みも線引きもできないからだそうで、代わりに古書店と専門書店を活用するのだそうです。そして最初に、調べたい分野についてよい入門書を読むべき、といい、よい入門書の条件を示しています。

  1. 読みやすくわかりやすいこと
  2. その世界の全体像が的確に伝えられていること
  3. 基礎概念・基礎的方法論がきちんと整理されて提示されていること
  4. 中級・上級に進むためには、どう学んで行けばよいか、何を読めばよいかが示されていること

それから、本を読みながらノートを取るのは時間の無駄、ということで、ページを折ったり線を引いたりすることを勧めています。私も本に線を引くのは、最初非常に抵抗があったのですが、最近ではばんばん引いてます。通勤電車などで線が引けないときは、ページの角を折り曲げるのもよくやります。こうすると、あとで読み直すのに時間が大幅に短縮できます。
情報収集法について驚くのは、コンピュータの活用と限界について触れていることです。本書は1984年初版ですから、執筆開始は世の中にPC-88シリーズが出始めた頃に、「コンピュータの利用目的は検索」と言い切っているところは慧眼と言えるでしょう。

さらに情報収集で重要なインタビューについては、単独で章を設けるほど詳述されています。その考え方をよく表した部分を引用します。

安易な問い方をし、それに安易に答え、その安易な答えに満足して問答を終わるという最近のテレビ・インタビュー的風潮に私は反発しているので、いいかげんな質問者にはわざと意地悪く質問を返し続けることが良くある。はじめの問いがいい加減でも、自分の中に問うべきものをしっかり持っている人は、質問を帰されたときにすぐにきちんとした質問で切り返すことができるものである。しかし、それを持たない人はまともな質問がついにできない。

実に耳の痛い話です。当社でも雑誌や単行本を細々と出してはいますが、企画が曖昧なために、内容が希薄になってしまった記事がずいぶんありました。立花さんは、事前の準備(調査)が重要だと繰り返し書いています。

本当に書き出せばきりがないほど示唆に富んだ本ですが、この本はある意味、以前紹介した「知的生産の技術」批判であると私は思います。同書でも取り上げているKJ法については、明確に批判しています。ですから、もし調査や研究のために本書を参考にされるなら、ぜひ両書を比較して読まれるとよいのではないでしょうか。立花さんが頻繁に書いている通り、自分なりの調査&情報整理法が見つかるはずです。

|

« 「ニッポン社会」入門 | トップページ | 富士山頂 »

教養書」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/45933280

この記事へのトラックバック一覧です: 知のソフトウェア:

« 「ニッポン社会」入門 | トップページ | 富士山頂 »