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2008年5月 5日 (月)

バカ親、バカ教師にもほどがある

「バカ親、バカ教師にもほどがある子ども化する大人たち」藤原和博/川端裕人聞き手(PHP新書)

私事で恐縮ですが、私は昨年度1年間、娘の中学校でPTAの仕事を引き受けました。小学校の時は妻や義母に任せきりだったので、娘の進学をきっかけに、積極的に引き受けてみようと思ったからです。結果的に「PTAをやってよかったなあ」と思っていたとき、本書と出会いました。

著者の藤原さんは、言わずとしれた杉並区立和田中学校校長で、聞き手の川端さんは、PTA経験が豊富な作家です。

かなり攻撃的であり、かのベストセラーを意識したようなタイトルなので、最初は手に取るのをためらいました。タイトルだけ立派で中身が薄い新書をこれまで何度も手にしてきたからです。しかし冒頭部分で、聞き手である川端さんが、ご自身のPTA活動をきっかけにして、本書の企画に参加していることを知り、読んでみようと思いました。

昔のように、みんなが「豊かになりたい」という統一価値観で生活していたときは、情報処理能力によって単一解を導き出せばそれで幸せでした。しかし、現代の日本は典型的な成熟型社会であり、一人一人様々な価値観で生活しているため、しばしば利害衝突が生じます。これを解決するには、お互いに話し合って納得解を導き出すしかありません。そこで必要となる力が、情報編集力である、と藤原さんは言います。

成熟社会の利害衝突が、学校で現れたものが、いわゆる「モンスターペアレンツ」であり「問題教師」と呼ばれる現象なのでしょう。本書は、編集部が集めたさまざまな事例について、川端さんが聞き手となり、藤原さんがそれに答える、という形で構成されています。第1章は「バカ親の壁」ということで、親からの様々な要求について語られ、第2章は「バカ教師の壁」。取り上げられている事例の見出しだけ、ちょっと引用してみます。

  • うちの子にスリッパを貸して!
  • 新人教師!?ハズレじゃん!
  • 先生がうちの子を起こして!
  • 教え方がなってない! 自分に教えさせろ!
  • キモイから担任を替えて!
  • 私のクラスにいじめがあると言うの!
  • それは個人情報保護法に触れるからダメ!

この中の、「上履きを忘れた子になぜスリッパを貸さないか」という事例について、藤原さんは「安全上の問題」と明確に答えます。親は懲罰的に貸さないのだと決めてかかってきますから、この回答ならきっと納得が得られるだろうなと思います。納得解とはそういうことかと、大いに納得します。

そして最後の第3章は「親と子の壁」ということで、教育問題を、教師と生徒のギャップととらえるのではなく、成熟社会における大人と子どものギャップとしてとらえるべきだと書いています。つまり、変化が激しい現代で、子どもは親と同じような人生は歩めず、親は自分の子ども時代の知識で子どもの意識が理解できないのです。
だから情報編集力が重要であり、その育成には大人と子どものコミュニケーションが必要、ということで、そのキーワードとして「テレビ」と「ケータイ」を挙げています。

本書は、藤原さんに川端さんが聞く、という基本構成ですが、川端さんが単純な聞き手でなく「訊き手」でもあるため、問題が明確になったり、解決策が見えたりして話題がふくらんでいます。編集部の集めた事例もよかったのでしょう。
本書を読んで、大人と子どものコミュニケーション・ギャップへの対応方法が、一つ得られたような気がします。

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