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2008年6月30日 (月)

働く人の夢

「働く人の夢」日本ドリームプロジェクト編(いろは出版)

「人は何のために働くのか」仕事をしたことのある人なら、だれでも一度は考えたことのある問いでしょう。この問いに対して、日本ドリームプロジェクトの方々が、仕事をする人たち33人の夢についてまとめたのが本書です。33人はそれぞれ別の職業に就く人々で、現在の夢と、その仕事に至った経緯について語っています。そして本書は読者に問いかけます。

「あなたに夢はありますか」

プロジェクト代表の「きむ」さんは、前書きで、就活を前に仕事選びで途方に暮れる大学生に本書を届けたかったと書いています。そのために1005人の人から話を聞いたのだそうです。本書のサンプルができたとき、大学生に見てもらうと「あーー。。やっぱり私も笑顔で働きたい」という反応だったとのこと。本書の33人がほとんど笑顔で登場する、ということはもちろんあるのですが、ポイントは掲載されているコメントの力でしょう。みなさん前向きで一生懸命。決して楽しいばかりじゃない、悩みも語っておられるのですが、なぜか読んでいるこちらも笑顔になれるのです。

コメントの中で、私は特に、新幹線の車掌さんの言葉に心を打たれました。

無事に目的地まで到着しようが、予定時刻と一秒と違わずに目的地に到着しようが、365日1本の電車が欠けることなく走ろうが、それが当たり前。(中略)少しのミスが、たった1分の遅れが、たった1本の運休がお客様の信用を裏切ることにつながる。(中略)報われない仕事かなって思ったこともある。でも妥協はできない。(中略)新幹線が安全に時間通り毎日走り続けていることが「当たり前」のこととして認識されていることが、何よりも自分の誇りとプライドだから。

読みながら、不覚にも涙が出ました。24歳の若者が、これほどまでに高い職業意識を持って仕事に取り組んでいることに驚き、その仕事のありがたさを実感したからです。私たちの生活は、こうした無名の人たちの真摯な取り組みによっても支えられているのだなあと実感しました。こうした力のある、魅力的なコメントが、本書には随所にあります。100歳の保育園園長さんのコメントも感動しました。

本書を出版しているいろは出版は、これまで「中学生の夢」「高校生の夢」「先生の夢」「1歳から100歳の夢」など「夢」をテーマにした本を数多く出版しています。私の近所の書店でもコーナーが設けられていたこともあり、個人的に注目していました。今回が初めて購入したのですが、それは今回ようやく「書籍」になっていたからです。

これまでの本は、失礼ながら学生さんが作った壁新聞的でした。ただ集めただけで、掘り下げた形跡もなく、情報を選び抜く苦労も感じられませんでした。同じように子どもの気持ちを集めた本に、晶文社から出版されている「こどものことば」がありますが、これと比べていただければ、「集めた本」と「選び抜いた本」の違いをご理解いただけるかと思います。

本書もプロの目から見ると、掲載されている写真の品質は悪いし、読みにくいブックデザインだし、代表「きむ」さんの文章も、素人そのものです。しかし、思いは伝わります。情報を精選した跡が感じられますし、前作よりも伝える技術を学んだ跡があります。何より、伝え たいという熱意が強くなっているように感じられました。
つくづく、人に思いや考えを伝えるのは、技術よりも熱意なんだなあと実感しました。

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