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2008年6月 2日 (月)

授業の作法

野口流 授業の作法」野口芳宏著(学陽書房)

近頃、首都圏や近畿圏を中心に、若い先生が急速に増えていると聞きます。

一般に子どもたちは若い先生が好きですから、学校に活気が出るとは思いますが、一方で就職していきなり一人前の先生と同じ仕事を要求されるというのは、さぞかし大変なことだろうと想像します。本書は、そうした若い先生に向けて、ベテラン教師がノウハウではなく基本的な考え方を示した本です。

本書は序章を含め、全部で4つの章からなっています。

  • 授業以前の基礎作法
  • 授業準備の作法
  • 授業実践の作法
  • 授業発展の作法

それぞれの章は、単に内容別になっているというだけではなく、構成(項目立てとレイアウト)もその章の内容に沿ったものになっています。たとえば基礎作法の章では、各項目のタイトル名が「言葉遣い」「身なり」「文字」といった、教師として必要な要素そのものとなっています。しかも本文は2~3ページと非常に簡潔です。
それが準備の作法、実践の作法になると、必要な態度、授業で重要なふるまいがタイトルになります。「指導案をつくる」「傍観させない」「意見を引き出す」「ほめる」などです。しかも若手教師から良く出るであろう相談内容に対応する形でまとめられています。

  • 教材研究や授業準備に時間をかけたいのですが、業務に追われ余裕がありません。
  • 全員に考えさせたいと思うですが、発言者以外は注意散漫で、意見を聞いていません。
  • 成績のよい子が発言すると、その後は「同じです」ばかりで話し合いの余地がありません。

これらの問いに対して、野口さんが明確に回答していきます。項目の解説は、3~4ページと基礎よりも若干増えますが、無理なく読み進められます。

私自身教壇に立ったことはありませんが、本書で述べられていることは、企業内教育、人材育成でも役立つな、と思える事項が多かったです。たとえば「実践に埋没しない」という項目では次のように書いてあります。

「実践埋没型教師」はみな、自分は誰よりも頑張ってきたと信じて疑わないことです。目先の課題解決だけに汲々とし、成長の意欲すら忘れていることにも気が付いていません。実践埋没型から脱出する手段はひとつ。自分から時間を生み出す工夫をし、自分自身の成長のために使える時間を積極的に「つくる」ことです。

以後時間の作り出し方が具体的に書いてあるのですが、これなど多くの企業でも抱える問題でしょう。他にも、「指導案」を「企画書」と読み替え、「授業の眼目」を「施策のねらい」と置き換えれば、ビジネスマンにも意義深い指摘ばかりです。特に「授業準備の作法」の章は、ビジネス現場の作法としても参考となる点の多い内容となっています。

とはいえ、本書をノウハウ本としてとらえてしまうと問題があるでしょう。授業は、生身の人間を相手にする行為ですから、そもそも手順化できるはずがありません。私は、本書の価値は項目立てにあると思っています。基礎作法の章での項目は名詞で、それ以外の章では項目名が動詞です。「作法」というくらいですから、動詞が中心となるのはあたりまえなのですが、先生が教壇に立って教える、という行為を、いくつかの名詞と動詞に分解して示したということが本書の本当の価値だろうと思います。仕事を要素に分解することは生やさしいことではありませんが、分解された項目について考えるのは、比較的容易にできますから。
この項目に沿って自ら考え、場合によっては先輩教師や管理職に質問する、ということをしてゆけば、きっと大きく成長できるのではないかと思いました。

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