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2008年7月14日 (月)

12歳からのインターネット

「12歳からのインターネット」荻上チキ著(ミシマ社)

先日ケータイ世界の子どもたちという本をご紹介ました。これは、大人が大人に向けて書いた本でしたが、本書は子どもが読むように書かれた、インターネット利用の指南書です。ただ、単に子ども向けに書かれたインターネットに関する本は、他にもたくさんあります。本書の特徴は、子どもたちにインターネットをできるだけポジティブにとらえてもらい、より有益で安全な使い方を知ってもらおう、というねらいで書かれているということです。

先日、道徳や人権教育に力を入れている中学校へおうかがいした際、先生から「禁止教育で人権意識は育たない」というお話しをいただき、感動しました。つまり「~してはいけない」という言葉は、あまり力を持たないと言うことなのだろうと思います。本書の著者、荻上さんも、あとがきに相当する「保護者の方へ」に次のように書いておられます。

現在、子どもたちの多くが、すでにケータイやパソコンに触れ、インターネットの世界を生きています。(中略)子どもたちのことについて考えるのであれば、「使い方のレクチャー」と「制度の準備」の両方を同時に進めなくてはなりません。ただ単に「(中略)こんなにあぶない」と主張するだけで、結局何も若い世代に用意しないのは「大人」として恥ずかしい。(中略)「危険な面」ばかりを強調してケータイやパソコンを取り上げることは簡単ですが、それは根本的な解決にならないし、いつまでたっても子どもが、未来が、育ちません。

本書は基本的に、子どもたちの問いに対して荻上さんが回答していく、というQ&A方式で進んでいきます。

Q5 「3日以内にこのメールを10人に転送しないと不幸がおこる」ってメールが来た。どうすればいい?
A5 それはチェーンメールと呼ばれる、昔からあるいたずらメールだ。ハハッと笑いとばして、すぐに削除しよう。くれぐれもほかの人に転送しないようにね。

このQ&Aの直後に、「Chiki's Voice」という詳しい解説が続きます。このようにまず端的に結論を述べ、あとから詳しく説明、というのが本書の基本構成です。解説文も、小学校6年生にも分かるように、という配慮の跡が見られます。そしてなにより、荻上さんの、フレンドリーな「お兄さん目線」のメッセージ効果的です。まだ20代前半の荻上さんだからこそ書ける文章かな、と思います。

とはいえ、本書がインターネット利用の危険性に触れていないわけではありません。大切なところはきちんと押さえています。しかも「メール」→「ブログ・掲示板」→「個人情報」と、子どもたちにとって、関心の高い順番に説明をしているので、「できること」と「危険性」が、印象的に伝わるのではないでしょうか。

おそらく、メディア教育の専門家が本書をお読みになると、内容的に不十分な点が目に付くことだろうと思います。本づくりの視点から見ても、説明語彙の選定や、語釈の点ではずいぶん課題があると感じました。しかし子どもを子ども扱いせず、必要な情報を彼らの目線で届ける、という本書の取り組みは、非常に重要です。価値のある仕事です。荻上さんの今後に期待するとともに、私も彼に負けないよう、がんばっていこうと思いました。

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