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2008年7月28日 (月)

友だち幻想

「友だち幻想人と人の<つながり>を考える」菅野仁著(ちくまプリマー新書)

先日紹介した「ケータイ世界の子どもたち」という本が言及していた「同調圧力」ということについてもう少し知りたいなと思っていたとき、この本の存在を知りました。いつものように、「はじめに」の部分を読み始めると、いきなり直球が届きます。

友だちが大切、でも友だちとの関係を重苦しく感じてしまう。そうした矛盾した意識をつい持ってしまうことはありませんか。こうした問題を解きほぐして考え直すためには、じつは、これまで当たり前だと思っていた「人と人のつながり」の常識を、根本から見直してみる必要があるのではないかと私は思うのです。

著者の菅野さんは、社会学者の立場で「現代社会に求められている親しさとは何か」を明らかにしようとしています。現状を分析するだけでなく、「このようにとらえ直してみたらどうだろう」「言葉遣いをちょっと変えてみたらどうだろう」といった、具体的な提言で結んでいます。私自身、本書の分析や提言は、非常に参考になりました。子どもとの関係を考え直すだけでなく、職場でのコミュニケーションについても、貴重な提案をもらった気がします。

このすばらしさを理解いただくためには、本書の目次をご覧いただくのがよいかと思いますので、以下にすべて引用してみます。

  • 第1章 人は一人では生きられない?
  • 第2章 幸せも苦しみも他者がもたらす
  • 第3章 共同性の幻想──なぜ「友だち」のことで悩みは尽きないのか
  • 第4章 「ルール関係」と「フィーリング共有関係」
  • 第5章 熱心さゆえの教育幻想
  • 第6章 家族との関係と、大人になること
  • 第7章 「傷つきやすい私」と友だち幻想
  • 第8章 言葉によって自分を作り変える

印象的だったのは、まず第1章の「現代の都会では、一人でも生きていける」という主張です。社会インフラの整備が「親しさ」や「つながり」の変容につながっていると述べています。次に第3章の「同調圧力に屈せず、同質性ではなく並存性を目指そう」という主張。苦手な人と同質になろうとせず、並存しようという説明です。
第5章と6章で言及している、先生や親の責任についても考えさせられました。「みんな仲良く」とか「友だち100人」とか言うからつらいのだと。確かに大人は、子どもに理想を押しつける場合がありますね。そして最後に第8章。人間関係を認識するのに言葉が重要だが、現代は「うざい」「ていうか」「カワイイ」「KY」といった言葉で、様々な事象を割り切ってしまうと指摘します。充実した関係構築のためには、多様な表現が必要だし、多くの言葉を身につけなければならないという主張は、もっともだと思いました。

子どもとメディアの問題を考えるとき、私たちはつい携帯やパソコンなど、デバイスの使い方にばかり目が行ってしまいます。しかしこうした社会学的な視点で、そのつきあい方をとらえなおしてみると、案外新しく見えてくることがあるものだと思いました。
本書は、もともと中高生向けに書かれた本ですが、親や先生にもぜひ読んで欲しいと思いました。読書会のような形で、一緒に読むのもよいかもしれません。この夏休み、本書を読んで友だち関係を考えてみる、というのはいかがでしょうか。

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