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2008年8月 7日 (木)

高校生のためのメディアリテラシー

「高校生のためのメディアリテラシー」林直哉著(ちくまプリマー新書)

「友だち幻想」という本と出会って、「ちくまプリマー新書」というシリーズの存在を知りました。挿絵は大きいし、ふりがなが数多く使ってあるので、てっきり中高生向けのシリーズかと思ったら、サイトを見るとそうでもないようです。

確かに面白そうなタイトルがたくさん並んでいます。今回はその中から本書を購入しました。現役の高校の先生が書いたメディアリテラシー教育の本、ということで興味を持ったからです。

一口にメディアリテラシー教育といっても様々ありますが、本書で語られているのは、映像製作の活動です。著者の林さんが、長野県の公立高校で指導した放送部の活動を中心に、メディアリテラシーを教えることについて説明しています。印象的なのは、本書の第一章の書き出し。メディアの特性、ということについては、すでに多くの人が多くを語っていますが、これは、かなり本質を突いていると思いました。

「すみません、今日の朝食は何を食べましたか」
駅前で突然こんな質問をされたら、「ちょっと、あなた大丈夫……」とでも聞き返したくなってしまうでしょう。でもこれが、ビデオカメラをかまえマイクを持った人からの質問だったとしたら、どうしますか。応えるか無視して通り過ぎるかは別として、それがインタビューであることは何も言わなくても理解できるでしょう。

カメラとマイクの威力について端的に分かる説明です。林さんが、家庭用ビデオカメラがまだ珍しかった時代から、カメラを持って取材する活動に取り組まれていたからこそ書ける文でしょう。取材せずにスタジオでコメントするだけの「ニュースキャスター」が少なくない中で、林さんのメディア教育が実地主義に基づくものだと言うことがよく分かります。

この実地主義をベースに、生徒たちは、取材や表現のスキルを学んで行きます。カメラアングルのこと、ビデオ編集ソフトのこと。それにアナウンス技術。しかし、スキルを身につけただけでは、どうしても伝わらないことがあることに生徒たちは気づきます。
本書には、林さんの文章の他に、林さんが指導された生徒さん(元生徒)の文章(感想)が効果的に掲載されています。取材や映像作りの中で、失敗したり叱られたりなどする中で学んだこと、気づいたことなど…。生徒自身の言葉で、自らの成長が語られることで、こうした映像を媒介とした活動が、確実に生徒たちの学びになっていると言うことが分かります。

実際、彼らの活動は、学校の雰囲気を変え、卒業式や入学式を変え、社会を変えることにつながっていきます。巻末に掲載された、もっとも長い文章は、本書のテーマに直結した非常にすばらしい文章です。本書の主張を、著者の林さんに代わって雄弁に語ります。メディアを学ぶとは、ものを見、考えることなのだと。

「見て、そして考える」ということは、先日紹介した「いのちの食べ方」でも述べられていましたが、メディア教育という以前に、生きるために必要なことでしょう。一読後、現在も放送部の生徒さんを精力的に指導されているであろう、著者の林先生に、ぜひ一度お会いしたいと思いました。

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