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2008年8月21日 (木)

著作権という魔物

「著作権という魔物」岩戸佐智夫著(アスキー新書)

本書を書店で見つけたときは、少なからずどきっとしました。タイトルもどぎついですが、帯には

現行の「著作権」は日本を滅ぼす

と書いてあります。政府も財界も、こぞって「これからは知的財産立国を目指す」と言っていたのに、その根幹をなす法律が「国を滅ぼす」と本書はいうのです。これはいったい、どういうことなのでしょうか。

私たちは、「法律で決まっている」と言われると、人類の真理と考えてしまいます。しかし、よく考えてみると、法律は人間が作った決まりです。人間は神ではありませんから、作った時点で想定していなかった事態が生じ、葛藤が生まれることがあります。この葛藤は、事例が少ない場合なら裁判で決めればよいですが、葛藤が多発してきたら、それは法律そのものを変えることになります。たとえば日本で女性参政権を認める法律ができたのは、まだほんの60年ほど前のことです。

さて、前置きが長くなりました。本書の主張は、ざっくりと次のようにまとめることができます。

情報通信の社会インフラが急激に変化している中、日本は、著作権法など周辺の法律はあまりにも不備で、現状を踏まえていない。コンテンツ産業の方々は、現状維持に汲々としている。しかし、これを放置すれば、早晩日本は立ちゆかなくなる。

著者の岩戸さんは、本書のプロローグでユーチューブ(YouTube)出現の衝撃を書き、以降著作権にまつわるキーマンにインタビューをしていきます。主な人は次の通り。

  • NHKと民放5社を相手に裁判で勝利した「まねきTV」とその周辺の人たち
  • 元文化庁著作権課長にして政策研究大学院大学教授の岡本薫氏
  • 竹中平蔵氏の元秘書にして現エイベックス社取締役の岸博幸氏
  • ファイブ・ディー(The Boom等の所属事務所)代表佐藤剛氏
  • JASRAC小島芳夫氏
  • 映像制作会社クリエイターズ社長の高村裕氏
  • 生活経済ジャーナリスト高橋伸子氏
  • 元通産相の官僚にして現早稲田大学准教授の境真良氏

ご覧の通り、実に様々な人に話を聞いています。これは、著作権問題の影響が、急速に広がっている証左ではないでしょうか。事実、この人たちへのインタビューによって、「早晩日本が立ちゆかなくなる」という問題が、現実に迫っていることであるが、それは単に著作権法を改正・変更すればよいと言う単純なものでない、ということが明らかにされていいます。

ネットワークインフラだけは世界最高レベルなのに、そこにコンテンツを流通させるべき法整備・条件整備がなされていないために、宝の持ち腐れとなっている日本。業界団体や省庁間のせめぎ合いでにっちもさっちも行かなくなっている日本。著作権ビジネスの現場にいる一人として、読後たいへん暗い気持ちになりました。しかし、この分野に関わる人には、ぜひ一度お読みいただきたい一冊です。

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