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2008年8月25日 (月)

空想科学読本6

「空想科学読本6」柳田理科雄著(メディアファクトリー)

子どもの頃、ヒーローの変身や必殺技に心ときめかせた人は多いでしょう。私も中学校の頃、某野球漫画に影響されて、「スカイラブ投法」「ジャコビニ流星打法」なんてやってました。とはいえ当時の私でさえ、そんな打法や投法が実際にできるなど、もちろん思っていませんでした。

なのに本書は、そうしたアニメや漫画の設定を「科学的」に「分析」し、実現の可能性に言及しています。帯に小さく「夢を壊してベストセラー」と書いてある通り、ある意味作品を冒涜する作業なのかも知れません。しかし私は、非常に楽しく読めましたし、参考になりました。

「おもしろい」はともかく、何が「参考」になったかというと、問いの立て方と解明へのアプローチです。このあたりは著者の柳田さんも意識しているようで、本書の「まえがき」には、次のように書いています。

僕は勝手に、科学とは「疑問を抱き、情報を集め、自分の頭で考える」という3段階を踏んで発展するものだと考えている。実は最初の、「疑問を抱く」という段階が、なかなか難しい。(中略)本書は「疑問を抱く」という第一段階を読者の皆さんに担当してもらい、あとの段階を僕が踏んで、共同作業で完成させたと言えるだろう。とても幸せなカタチで成立した本。

柳田さんが問いを立てそれを検証する、というこれまでのシリーズと違い、本書では、読者からの疑問に答えるという形式を取っています。読者から寄せられた問いは、柳田さんというフィルタを通して選ばれるので、非常にバラエティに富んでいます。

  • アニメでは、空に飛び去ったヒーローが「キラーン」と光って消えていきます。あれは何が光っているの?
  • ブラック・ジャックのメスは、投げるとダーツのように刺さってました。実際、そうなるものですか?
  • 「超特急ヒカリアン」では、新幹線がロボットに変身します。乗客は無事でしょうか?
  • 「枕草子」に、藤原正光という人は蚊のまつげの落ちる音が聞こえる、という話が出てきます。どれほど耳がいいのでしょうか?
  • コブクロの「蒼く 優しく」に「ため息で錆びついたこの鍵で」という歌詞がありますが、実際にあり得ますか?

ご覧の通り、アニメから古典、JPOPまで幅広い疑問です。これらに対して、柳田さんは、
 情報収集・調査分析・計算
の過程を何度か繰り返しながら、結論に迫ります。
たとえば「キラーン」と光るヒーローへの疑問では、まず太陽光の反射を考え、それが当てはまらないと分かると、ダイヤモンドダストの可能性を検証し、最後に空気摩擦による燃焼の可能性が高いと結論づけます。
その結果「もしあなたがキラーンと光って虚空に消えるヒーローを見たら、その苦しみを思いやり、そっと祈ってあげよう」など、夢のない回答に至りますcoldsweats01。他にも、柳田さんの回答は、たいてい「あり得ない」「可能性はあるが別の問題が生じる」といった感じです。とはいえ、ブラックジャックの問いのように「検証の結果確かにそうなることがわかった」というものもあり、楽しめます。

本書で展開される解明のプロセスや回答は、一見ばかばかしく見えるかも知れません。実際、柳田さんの文章もギャグっぽい書きぶりです。しかし私は、本書で行っている情報の集め方、検証の仕方などは、問題へのアプローチとして一般性があると思います。
勉強でも仕事でも、自ら問いを立てることはとても 大切ですが、これがなかなか難しい作業です。本書が提示した「ヒーロー物に疑問を見出し、それを科学的に解明しようとする」という遊びは、実は、研究課題 を設定したり、企画を立案したりする際、結構参考になるのではないかと思いました。

この時期、夏休みの自由研究の目算が立たず、完全にお尻に火が付いている人もいることでしょう。本書を参考文献としてテーマをひねり出してはいかがでしょうかhappy01

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