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2008年9月18日 (木)

16歳の教科書

「16歳の教科書 なぜ学び、なにを学ぶのか」7人の特別講義&モーニング編集部編著(講談社)

「勉強なんて、意味ない。方程式が解けなくたって生きて行ける」などと思ったことはありませんか。私は学生時代、テストの前は、いつもそう思っていました。しかしその時の私は、学びに対する根源的な疑問を持っていたわけではなく、試験勉強をしないための言い訳を探していただけのように思います。

とはいえ、現代は学ぶ意味を見出しにくい時代です。当時の私と違い、「なぜ学ぶのか」を真剣に考える中高生は少なくないでしょう。本書はこうした疑問に対し、7人の識者がそれぞれの分野から学ぶ意味を語っています。

  • 国語 金田一秀穂 絵筆のように言葉を使おう
  • 数学(計算) 鍵本聡 数学力とは「真実を見抜く力」だ!
  • 数学(図形) 高濱正伸 数学が「見える」ってナンだ!?
  • 英語 大西泰斗 考える前に感じてみよう!
  • 理科 竹内薫 紙飛行機で「世界」を飛べる
  • 社会 藤原和博 「情報編集力」を身につけよう
  • 心理 石井裕之 「自分という他者」を味方につけよう

いずれも単著を複数出版し、各分野ですばらしい実績をお持ちの方です。彼らが、「中高生に学ぶ意味を考えてもらいたい」という意図で寄稿したのですから、ある意味非常に贅沢な本です。実際、私にとってもたいへん参考になる内容の多い本でした。
各先生がおっしゃっているポイントを少し紹介します。

国語:金田一先生
言葉にとって大切なのは、(中略)なによりも先に「正しさ」なのです。(中略)国語力を鍛えるトレーニングとして、僕はよく「絵を言葉で書いてごらん」と言っています。(中略)慣れてきたら、今度はその文章を友達に読んでもらいましょう。そして自分がやったのとは逆に、その文章を絵に描き起こしてもらう。
数学:鍵本先生
これは意外な話かもしれないけど、数学が苦手な生徒って、姿勢が悪いんですよ。(中略)だから僕の塾では、まず姿勢です。姿勢を正しくすることから勉強は始まる。そして、実際それだけで成績が伸びていく。
英語:大西先生
英語が苦手だという人はたくさんいます。だけどね、みんなそんなにやっかいな問題を抱えているわけじゃない。基本的には「単語力」がない。(中略)大学受験レベルなら最低5000語くらいはほしい。(中略)5000語も単語が頭に入っていると、それから先は少し楽になるんだよ。(中略)類推が効くようになるから。

いかがでしょうか。どの先生方も、非常に具体的な提言をされていることが分かるかと存じます。もちろん、もっと本質的なことや、気持ちの持ち方などのアドバイスが十分にあった上での具体的アドバイスなのですが、このように示してもらうと、なんだか今日からでもできそうな気がしますよね。そういう説明の仕方が、上手だから、この方々はこの分野で実績を残しておられるのでしょう。

それと、本書を語る上で重要な要素がもう一つ。それは編集部の存在です。こうした複数の著者、しかも多忙な方を集めた本ですから、原稿をそれぞれ依頼してまとめる、という本作りは不可能に近いでしょう。依頼の段階で多忙を理由に断られることも多い上、万一頼めたとしても原稿集めが大変だからです。ですからおそらく本書は、インタビューを原稿に書き起こすという方式を採ったのでしょう。これは、確かに原稿集めは楽になりますが、インタビュー内容を著者の意図に沿うようにまとめるのは、そう簡単な作業ではありません。しかもただまとめるだけではだめです。1冊の本にするためには、統一的な意志を持ってまとめなければなりません。

編集部は、その象徴として「ドラゴン桜」という漫画の登場人物を据えました。この漫画は、高校の再建を請け負った弁護士と、東大を目指すことになった高校生の物語ですが、この物語の世界観と、本書の設定をだぶらせることで、教科ごとの解説に統一感を持たせることに成功しています。

最近は、あるブランドが成立すると、中身がろくに関係していないのにタイトルだけ拝借するという商品が少なくありません。けれども、本書の「ドラゴン桜公式副読本」というサブタイトルは、十分に意味のあるものと感じました。

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