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2008年11月 3日 (月)

仙台、言葉の幸。

Sendai 「仙台、言葉の幸。 せんだい現代文学案内」仙台文学館編(仙台文学館)

先日新宿のJ書店で、「ふるさと文学散歩」という企画をやっており、本書を見つけました。発行は、仙台文学館。文学案内と観光案内をミックスさせたような、面白い本でした。

本書は、仙台出身または仙台在住の作家の紹介と、作品に登場する仙台と、その場所を解説した本です。文学案内と観光案内を融合させたような本と言えるかもしれません。登場する作家は次の11名です。仙台との関係とともに列挙してみました。(敬称略)

井上ひさし(初代仙台文学館長・在住経験)
佐伯一麦(出身・在住) 熊谷達也(出身・在住)
伊坂幸太郎
(在住) 瀬名秀明(在住)
三浦明博(宮城県出身・在住) 俵万智(在住)
伊集院静(在住) 小池真理子(在住経験)
恩田陸(出身) 若合春侑(在住経験)

井上さんは、初代館長であり文学館で常設展もある作家なので、今回は館長さんとの対談のみで登場し別格扱いです。私自身存じ上げない方もいらっしゃいますが、「へえ、この人が」という人も多く、非常に楽しく読めました。

最も興味深かったのは、みなさんがお書きになっている、ご自身の作家活動と仙台についての文章です。「紙と鉛筆があれば作家活動はできるだろう」などと思ってしまいがちですが、やはり土地の影響というのを受けてしまうのでしょう。みなさんの文章を読んで、在住の方はもちろん、人生の大切な時を仙台で過ごした方にとって、場所の特性は大きいのだと実感しました。どの方の文章も印象的なのですが、少し引用してみます。

北の街の夏の短さは非常に新鮮でした。それまで暮らしたことのある東京や鎌倉、京都、ましては故郷で知っていたのとはまったく異なる季節感、とりわけ夏から秋の密度の濃さを初めて知りました。伊集院静さん

住み心地がいい、作品を書きやすい。そう思えるのは仙台という街のリズムが自分の呼吸と合っているからかもしれません。僕の文体にしても、きっと仙台で書き続けてきたから生まれたのではないかと思います。自分でも気づかないうちに、日常の全部が作品と関連しているのでしょうね。伊坂幸太郎さん

私にとっての仙台は、「青春時代を過ごした思い出の地」などというやわな言葉ではとても括りきれない、精神的自立を迎えた時期に過ごした、鮮烈な存在感を放ち続けている街なのです。小池真理子さん

また、作品に登場する街の紹介も魅力的です。「X橋」「伊豆沼」などは、本書の文章を読み、写真を見て、行ってみたいと思いました。また、俵万智さんの場合は、歌人らしく、場所ゆかりの歌を詠んでおられます。

東北の博物館に刻まれし 父の名前を見届けに行く
仙台のほどよき規模を思うなり ほどよく混めるベニーランドで

地方発のこうした出版物は、意外とたくさん出版されてはいるのですが、読者層がしぼりきれていないのか、意図のはっきりしないものが少なくありません。その点、本書からは、文学好きの方に仙台を訪れてもらおう、仙台を好きになってもらおう、という明確な編集意図が感じられます。とてもすばらしいと思いました。

Sendai2 ただ、本書の表紙は、なぜ伊達政宗のデザインなのかが分かりませんでした。文学とあまり関係がないように思えます。カバーを取ると、左のように美しい表紙があり、この方がずっといいと思うのですが。書店に出すために、ISBNを取ったというわけでもなさそうなので、ちょっと謎です。
それからついでに、もし次回があるとすれば、ぜひ漫画も取り上げて欲しいと思いました。仙台ではありませんが、宮城県からは、石ノ森章太郎さんや大友克洋さんなど、世界的な漫画家を輩出しているのですから。

私も仙台に行ってみようと思いました。

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