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2008年11月17日 (月)

外国語学習の科学

「外国語学習の科学──第二言語習得論とは何か」白井恭弘著(岩波新書)

「何年も英語を勉強しているのに、なぜ身に付かないのか」というのは、多くの日本人が一度は抱いたことのある疑問でしょう。私もそうでした。そのためでしょうか、電車に乗ると、必ず英会話学校の広告がありますし、ウエブサイトでもよく見かけます。

けれども、それらの広告をよく見てみると、実に様々な方法論が展開されています。いったいどの方法が正しいのでしょうか。

本書には、そうした方法論のもとになっているであろう、研究成果が多数紹介されています。しかも、「ここまでは分かっている」「ここからは分かっていない」ということが明確にされているとともに、「○○という説もあるが、真反対の△△という説もある」と言うような具合に、相反する理論についてもわかりやすく解説してくれています。

たとえば第2章の「なぜ子どもはことばが習得できるのか」では、「外国語学習は、どうやら早期に始めた方がよいらしい」としながらも、「外国語習得の『臨界期(年齢限界)』は、存在が証明されていない、といいます。また、英語習得において、英語を読んだり聞いたりする機会を増やせば上手になる、という考え方(インプット仮説)には、一定の合理性はあるものの、それで説明できない現象も多々あり、一概にそうとは言えない、のだそうです。
これらのことを理解すると、英語教室や英会話教材の宣伝文句に惑わされることは少なくなりそうです。「お子様の英語は早く始めないと、一生身に付きません」などという、子ども向け英会話教材の宣伝文句は、眉につばを付けて聞く必要がありそうですし、「聞くだけで英語がどんどん身に付く」なんて英会話教室の宣伝も、あまり信用できないようです。

それから、著者の白井さんは、これまで私たちが信じてきた

  • 単語と文法を覚えて、それをちゃんと発音すれば、外国語が使える
  • 単語と文法を組み合わせれば、文としては正しいものがつくれる

というのは、必ずしもあたっていないと指摘します。文法的に正しくても、意味の通らない文の例は、ずいぶんあるそうで、本書でも具体的に紹介されています。さらに文化的な背景も重要なのだそうです。たとえば、英米人から「英語お上手ですね」と英語で言われたら、我々日本人は「いえいえ、まだまだです」なんて言いたくなりますが、相手の褒め言葉を否定する、極めて失礼な行為になります。英語を話す人の文化に「謙遜」がないからなのでしょう。
とはいえ、高校入試や大学入試の問題は、まだまだ文法中心ではないでしょうか。センター試験にヒアリングが入ったといっても、必須ではないのだそうですね。これでは、中学校や高校の授業が「コミュニカティブでない」と言ったところで何の意味もありません。

私自身、英語は不得意中の不得意ですが、本書は、外国語学習の全体感を知るのに、とても役に立ちました。来年から、小学校でも正式に英語が始まるそうです。関係者の方には、その参考書としてぜひお薦めしたい一冊です。

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