« ワークショップ型研修の手引き | トップページ | 人はどうして痩せないのだろう »

2008年12月25日 (木)

情報革命バブルの崩壊

「情報革命バブルの崩壊」山本一郎著(文春新書)

「IT革命」とか「情報革命」という言葉は、2000年ごろからよく使われるようになりました。「革命」という言葉が使われたのは、18世紀から19世紀にかけて起こった産業革命と同様、産業の変革と、それに伴う社会構造の変革が起こるから、というのがその理由です。実際、インターネットやケータイ、地デジの普及に伴って、私たちの生活は大きく変わっていくように見えます。

しかし、本書の著者山本さんは、「革命はバブルであり、すでにはじけつつある」というのです。

本書を書店で見かけたときは、さほど買おうとも思わなかったのですが、目次を読んで「読む価値あり」と判断しました。

  • まえがき 「無料文化」を支える過剰期待というバブル
  • 第1章 本当に、新聞はネットに読者を奪われたのか?──ネット広告の媒体価値が見えてきた
  • 第2章 ネット空間はいつから貧民の楽園に成り下がってしまったのか?──「理想郷」ネット社会の荒れ放題
  • 第3章 情報革命バブルとマネーゲームの甘い関係──一罰百戒の「一罰」はなぜ堀江氏だったのか
  • 第4章 ソフトバンクモバイルで考える時価総額経営の終焉──崖っぷちの天才・孫正義氏による「価格破壊」
  • 第5章 「ネットの中立性」とネット「無料文化」の見直し──ネット界隈が一般社会の秩序の枠組みに取り戻される時
  • あとがき ──リーマン破綻、そして宴は終わる

全体をご覧いただくと分かる通り、山本さんの論旨は「ネットのサービスが無料だという認識はバブルに他ならない」ということです。確かに電話の場合は、基本料金に加えて、回線使用料を距離や時間によって課金されるのに、ネットの場合は、一定の金額さえ払えば、外国にアクセスしようが、巨大な動画をダウンロードしようが、追加料金は発生しません。私自身、これまでは「ネットとはそういうものだ」と思い込んできましたが、考えてみれば不思議です。

ネットビジネスにおいては、より多くのユーザーの訪問を勝ち取るのが至上とされます。ですから、多くの法人や個人がそうしたサイトを作りました。その常套手段が「無料」です。膨大なサイトアクセスを勝ち取り、その広告収入で利益を上げるとか、より上質な有料サービスへの転換を促すというパターンが多いですが、これには決定的な問題点がありました。それは、事業が収益を生めるようになるまでに、時間と膨大な資金が必要だと言うことです。

山本さんは、このコストを負担してきたのが、投資家たちのバブルマネーだったと言います。であるとすれば、世界経済が急速に冷え込んだ今、ネットビジネスは今後変わらざるを得ないというのです。この主張は、私にはかなり説得力がありました。この大まかな捉えをしたうえで、一部のIT企業による時価総額経営や、ソフトバンクの自転車操業経営が、これまで「バブルマネー」を背景に成り立ってきていた、という第3章や第4章の主張を読むと、納得せざるを得ません。

また、第1章の「新聞社のネット事業が実は赤字を垂れ流している。それはネット進出を躊躇しているからに他ならない」という主張には、驚きもし、納得もしました。赤字であることくらいは、私もうすうす感じていましたが、「実は新聞社は顧客を知らない。これが最大の弱点」という主張は新鮮です。私自身もビジネスの視点を改めねばと思いました。

著者の山本さんは、古くからネットのコミュニティにかかわり、自らも投資事業などを行ってきた方です。本書はいわばインサイダーによる啓発書と言えるでしょう。ネットビジネスの明日を考える方には、強くお勧めします。

|

« ワークショップ型研修の手引き | トップページ | 人はどうして痩せないのだろう »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

ビジネス書」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/45933352

この記事へのトラックバック一覧です: 情報革命バブルの崩壊:

« ワークショップ型研修の手引き | トップページ | 人はどうして痩せないのだろう »