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2008年12月11日 (木)

東大合格生のノートはかならず美しい

「東大合格生のノートはかならず美しい」太田あや著(文藝春秋)

世の中東大ばやりです。東大卒の女優、東大卒の芸人、東大卒の棋士といった肩書きの人たちがテレビなどで活躍しています。女優も芸人も棋士も、学歴が問われる世界ではないのですが、一定の人気を博しているのは、その背景のストーリーに興味があるからなのでしょう。勉強もできたけど、別の才能も発揮できたのは……という部分に惹かれるのです。

そんな風潮に乗っかるようで、紹介するのは若干気が引けるのですが、本書は時流に乗っただけの本ではありません。しっかりとした取材に基づく好企画でした。

本書は、今年9月の発刊以来すでに6回増刷しているようですから、ベストセラーです。すでにお読みになった方も多いことでしょう。すでに売れている本を後追いで読むのは、なんだか少し悔しい、という思いが私にはあります。けれども本書は、書店でぱらぱらと立ち読みしたとき「あっ、美しい本だな」と感じ、反射的に購入してしまいました。

著者の太田さんは、通信教育の教材作りを職業にしていたとき、ある東大生に会い、そのノートのあまりの美しさに驚いたのだそうです。それがきっかけでノート取材を始め、まとめたのが本書というわけです。こう書くと、口コミで安易に集め、コピペして本にした、という印象を持たれるかもしれませんが、本書からは、随所に太田さんの迫力みたいなものがちりばめられています。それは太田さんの次の言葉にある程度集約されています。

知人から紹介された東大生に会い受験時代のノートを借り、そしてその東大生から新しい東大生を紹介してもらいまたノートを借りる。気がつけば、手元には200冊のノートが集まっていました。やはりどのノートも美しかったのです。美しいノートを書くことと東大に合格することとは関係があるのか? その答えが知りたくて、会社を辞め、フリーランスのライターになってからずっと、東大生の取材を続けてきました。そして気づいたのです──美しいノートと東大合格はやっぱりつながっている。東大生の受験時代のノートには、東大に合格するためのルールが隠されている。そして今回、その内容をこの一冊にまとめました。

興味を持つところまでなら、編集経験のある人ならだれでもあります。しかし、200冊ものノートを集め、会社を辞めてまで調査に専念するというのはなかなかできません。それだけに本書は、110ページ程度の薄い本ではありますが、細部にまで気配りがされています。

まずノートの実物コピーの精度です。鉛筆書きノートのコピーを取ったことのある方ならおわかりでしょう。鉛筆で書かれたノートをきれいにコピーするのは、実は至難の業です。しかも本書で取り上げているノートの場合、数年前~数十年前の古いものです。にもかかわらず、本書には、ノートの実物が実にきれいに再現されています。これを実現するためには、編集者と印刷屋さんの並々ならぬ努力があったに違いありません。この熱意があるからこそ、書籍の版型が一般的なノートと同じB5サイズになっている、という演出が活きるのです。

次にノート作りのポイントです。本書では、ノート作り7つのポイントを示しています。重要なポイントなので、本書の複数か所で登場する上、覚えやすいように、ポイントの頭文字が「と・お・だ・い・の・お・と」と折句になっているという配慮がなされています! 脱帽です。さらに、教科別ノートのポイントも示されています。

最後に、本書に対して当然予想される「ノートだけ上手に作ってもねぇ」批判に対して、太田さんは「ノート力はかならず活きる」と題して、力強いメッセージを書いています。
「最初はまねでいい。そのうち自分オリジナルのスタイルができるはず。そしてその力は、社会人になったとき非常に役立つはず」
この部分、私も激しく同意します。真剣に取り組んだ受験勉強は、学歴の取得以外に、将来よい仕事をする力につながっているのです。だからこそ、会社を辞めて本書を作った太田さんはこれだけの成果を上げたのだし、本書の調査結果が、文房具メーカーを動かし「ドット入り罫線ノート」に結実したのでしょう。

受験を控えた中高生はもちろん、指導される先生にもきっと参考になる本ではないでしょうか。私は、商品企画の参考書として使えるなあと思いました。

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