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2009年1月22日 (木)

800字を書く力

「800字を書く力──小論文もエッセイもこれが基本」鈴木信一著(祥伝社新書)

文章の書き方や、読み方についての本は、これまで星の数ほど、とは言いませんが、かなり読んできました。けれども、全く参考にならなかった本は無かった代わりに、非常に参考になった本もありません。まあ、畳の上の水練という言葉がある通り、理屈だけではダメで、結局は地道に練習するしかないということなのでしょう。

とはいえ、練習方法については知っておきたい、などと考えてしまい、今でも文章作成の本を見つけると、つい購入してしまいます。本書もそんな一冊でした。

結論から言うと、読み始めの期待が少なかったせいか、本書はかなりお買い得でした。著者の鈴木さんが高校の先生であるという関係かも知れませんが、とても説明が巧みなのです。
まず目次がすっきりしています。「文章が書けると、どんないいことがあるか」という説明に始まり、最後に読み方の解説、という構成です。

序章 学校で国語を学ぶ意味
第一章 「書くこと」の仕組み
第二章 800字を書く
第三章 言葉をどう自分のものにするか
第四章 「書ける」ようになるための読み方

この目次だけ見ると、文章表現の教科書のようで、目新しさは感じられないかもしれません。けれども、それぞれの章に具体的で説得力のある事例が提示されているので、読者は納得して読み進めることができます。たとえば第一章の論旨は
「あらかじめ書きたいことがなくても、一文一文書きつないで行けば書きたいことは見えてくる。書くことは発見の営みなのだ」
といった感じですが、「書けば書ける」という説明は、いささか乱暴すぎます。そこで、第一章の冒頭では、ある詩の最後の一文を( × )で隠し、このように問いかけて始まります。

次の詩の最終行を、作者は疑問文で結んでいる。同じように疑問文でこの詩を結ぶとしたら、あなたは( × )にどんな言葉を入れるか。ただし、作者が入れた言葉を当てる問題ではない。あなたならどうするかという問題である。
(紹介されている詩は省略します)

高校の先生である鈴木さんは、複数の授業でこの問いを出したところ、答えがおよそ6タイプに類型化されたそうです。読者に冒頭この事実を示すことで、詩のように自由な表現形式でも、続きの文となりうる文の候補はさほどないのだ、と実感させてくれます。最初に実感するからこそ、一見乱暴な「一文一文書きつなげれば書ける」という第一章全体の主張がすんなり納得できるのです。

第二章も同様の構成です。やはり鈴木さんが授業で行ったことがあるという「リレー作文」の事例を紹介し、第一章の主張をさらに具体化します。参加者が一文ずつ書き連ねて書いた作文を、完成後みんなで評価すれば、一文の書き方とつなぎ方がわかる、という具合です。こうした具体的な活動を積み重ねて行けば、だれでも「一文一文書きつなげれば書ける」ということが、実感できることでしょう。実際私も参考になりましたし、このブログの文章も、そのあたりを意識して書いてみました。

第四章の「読み方」についても、やはり具体的・演習的に説明されています。入試や業務などで「苦手なのに書かなければならない人」にとっては、まさに福音となるでしょう。実際鈴木さんが、社会人向けの文章講座を受け持ったとき、「目から鱗が落ちた」「こんなこと教わったことがなかった」などの大反響だったそうです。

言葉の働きや、人間の思考に関する記述については、ちょっと乱暴なところがあり、おそらく言語学や心理学の専門家から反論が寄せられることでしょう。けれども本書にはそうした欠点を補って余りある具体性があると思います。
文章を書きたいけど書けない人はもちろん、作文指導に悩んでおられる先生にとっても参考になる一冊ではないかと思いました。

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