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2009年1月 5日 (月)

日本でいちばん大切にしたい会社

「日本でいちばん大切にしたい会社」坂本光司著(あさ出版)

今年は丑年。私は年男です。還暦まであと一周と言うところまで馬齢を重ねて参りました。平均寿命を考えれば、まだまだ人生の折り返し地点に立ったばかり、という考え方もできますが、ここ数年、自分が仕事をする意味について常に考えるようになりました。

本書を手にしたのもまさにそうした考えからです。何かの雑誌に書評が掲載されているのを読んで、どうしても読みたくなりました。

著者の坂本さんは、法政大学大学院政策創造研究科の教授で、中小企業経営論や地域経済論などがご専門だそうです。研究の中で訪れた会社は、6000社を超えたとのこと! これは、毎日1社訪れたとしても、16年以上かかる計算になります。いくら専門といってもなかなかできることではありません。こうした現場主義の研究者を、私は尊敬し信用します。
本書は、坂本さんがそうした研究活動の中で出会った「大切にしたい会社」を紹介しています。第1部「会社は誰のために?」では、専門家として企業のあるべき姿を語り、第2部ではその姿に合致する企業を紹介しています。

正直この第2部のために本書を購入したのですが、第1部にもかなり感動しました。冒頭で「分かっていない経営者が増えている」と題して、次のように述べています。

最近、多くの人が勘違いしているのですが、会社は経営者や株主のものではありません。その大小にかかわらず、従業員やその家族、顧客や地域社会など、その企業に直接関わるすべての人のものなのです。だから国や県などの行政機関や商工会議所などが「私的なもの」である会社を、政策、税制、金融、技術、さらには経営面で大きく支援しているのです。会社は生まれた瞬間から(中略)広く社会のものと考えるべきなのです。

「会社は誰のものか」というのは、日本企業で株式の持ち合いを止め始めたときに起こった議論ですが、金融資本主義と言われる世の中で、会社の存在意義を「従業員のため」ましてや「家族、地域社会のため」などという専門家は皆無だったと記憶しています。しかし確かに会社は社会に支えられて存在しています。「Company」を「会社」と翻訳した明治の人は、その社会性を考えていたに違いありません。「Company」だってもともとは「仲間」という意味。会社は、社会や仲間がいて初めて成り立つのです。
さらに「会社経営とは『五人に対する使命と責任』を果たすための活動」と題して、企業の果たすべき使命について言及します。

  1. 社員とその家族を幸せにする
  2. 外注先・下請け企業の社員を幸せにする
  3. 顧客を幸せにする
  4. 地域社会を幸せにし、活性化させる
  5. 自然に生まれる株主の幸せ

「まず社員」という考え方に違和感を覚える方もおられるでしょう。「顧客だろう」と。けれども、坂本さんは「従業員が心から満足していなくて、どうして顧客に笑顔を見せられるでしょうか」といいます。これにはかなり説得力がありました。その上で最後が「株主」。しかも「利益」ではなく「幸せ」です。株の転売で一時の利益をかすめ取ろうとする株主など、経営的には無視して良い、ということなのでしょう。このあたり、有権者と政治家の関係にも似ていると思いました。自分に利益誘導してくれる候補者に投票するのではなく、理念や信条に投票するのが本来でしょう。

第1部を読んで、ずいぶんいろいろなことを考えさせられました。そして第2部では、大きく5社を取り上げています。

  1. 日本理化学工業株式会社
    • ダストレス・チョークを作る会社
    • 社員を大切にする経営を実践し、7割が障碍者
  2. 伊奈食品工業株式会社
    • 「寒天」という斜陽産業の中、48年間増収増益を達成
    • 顧客への配慮や地域貢献は社員が自発的に
  3. 中村ブレイス株式会社
    • 日本で一番へんぴなところにある会社
    • 思いやりにあふれた義手・義足を作る
  4. 株式会社柳月
    • 「お菓子の町」帯広にこだわる会社
  5. 杉山フルーツ
    • 寂れた商店街に輝く小さな店

紹介されている社長さんは、いずれも素晴らしい方々です。中でも、日本理化学工業の社長さんが、障碍者の生徒さんを初めて採用するくだりは、なかなか感動的です。世の中捨てたものではないな、と素直に思います。詳しくはぜひ本書をお読みください。

奥付を見て驚いたのですが、本書は2008年4月発行にもかかわらず、私が購入した本はすでに10月ですでに第21刷です。出版不況と言われる昨今、大手でない出版社の本が、これだけToshiotoko 多くの人に読まれているという事実に感動します。もう少し情報を整理すればもっと読みやすく、感動的な本になったのにな、と思わぬでもありませんが、そんな技術的なことは、どこかへ行ってしまうほど、坂本さんの熱い思いに脱帽しました。
2009年の仕事始めの日、年初に元気をもらった一冊です。

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