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2009年1月15日 (木)

叱る技術

「叱る技術 騒がしい教室を変える40の方法」上條晴夫著(学陽書房)

何か「方法論を伝授しよう」と考えたとき、いつも理念が先か、手順が先かを考えてしまいます。どちらも正解であり、問題は説明の仕方、などと思っては見るものの、説明の仕方を工夫するとき、やはりこの問題に行き当たるのです。

その点本書は、この問題について、簡潔な手順説明を中心にしながら、ごく簡単な理念説明を前後に入れる、という方法で対処しています。つまり、「考え方→手順→考え方」とすることで、手順説明を考え方の説明で補っているのです。

「手順説明が中心の本」というと、単なるマニュアル本と思われるかも知れません。しかし、本書では、手順と考え方がセットで理解できるような工夫が随所に見られます。まずは目次をご覧ください。

  • プロローグ:前提の話 (5)
  • 1:叱る技術 (10)
  • 2:空気を変える技術 (20)
  • 3:学びを生む技術 (10)
  • エピローグ:理論的な話 (5)

各項目の後に記載した括弧付きの数字は、その章の項目数を表しています。ご覧の通り、「叱る」ということが占める割合は非常に少ないです。つまり本書は書名こそ「叱る技術」となっていますが、教室で授業を成立させるための本なのです。これをもう少し詳しく説明するために、プロローグ「前提の話」の目次を引用してみます。

  1. 騒がしい教室が増えている
  2. 騒がしい教室を叱りたい教師が増えている
  3. 教室の空気を変える対処の仕方もある
  4. 新たな学びを生むチャンスもある
  5. 教室の騒がしさを指導の出発点に

ここでプロローグの目次と本書全体の目次を比べてみてください。内容的に重なっていることにお気づきでしょうか。プロローグは、授業を成立させるための考え方を示すと同時に、本書の内容が概観できるように設定されているのです。この役割がきちんと機能するように、各項目の重要ポイントは箇条書きで示されています。たとえば、「3.教室の空気を変える~」ではこんな具合です。

私語への対処法を整理すると3つあります。
one 私語を叱ってやめさせる
two 私語の中で何かを始める
three 私語のできる学びをする

これを見た読者は、きっと「私語のできる学びって??」と疑問に思うことでしょう。こうなればより印象的に本書が読めるわけです。誠に見事な構成と言わざるを得ません。

Shikaru_page プロローグだけでなく、1~3章の「~の技術」も左の写真の通り、見開き2ページに良くまとめられています。しかもそのうちの1ページは4コマ漫画です。漫画の中には、正直「う~ん」というものもないではありませんがcatface、ともすれば教条的になってしまいがちな内容を、受け取りやすくしています。

そもそも、叱ることはもちろん、教える作業を手順化するのはそう簡単なことではありません。それでも著者の上條さんが、この難しい作業に取り組んだのは、本書の想定読者にとって最適な説明方法だと考えたからでしょう。想定読者は、おそらく若い先生や教師を目指す学生さんたち。上條さんは、東北福祉大学で教える傍らNPO「授業作りネットワーク」の仕事もなさっているそうですから、若者たちの課題意識や考え方は熟知していると思われます。本書の説明手法は、若い人とのコミュニケーションのために、非常に有効なのだろうと思いました。

さらに「『なぜ』つきで端的に叱る」「小言はあっさりと」「子どもの意欲を否定しない」などの技術は、先生ばかりでなく、親としても企業の管理職としても十分応用できると思いました。立場にかかわらず、叱る必要を感じたら、目を通したい一冊です。

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