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2009年1月 8日 (木)

つげ義春コレクション

 「つげ義春コレクション1~3」つげ義春著(ちくま文庫)

昨年の10月から、ちくま文庫より、「つげ義春コレクション」と題して、毎月1冊刊行されています。つげさんの漫画は、筑摩書房より、全集が出ているのですが、今回はその文庫版といってもよいでしょう。漫画好きにはたまらない企画です。

現時点で3巻まで刊行されています。それぞれのタイトルと、その表4(裏表紙)で紹介された概要、各巻の解説者をご紹介します。

  1. ねじ式/夜が掴む
    • 表4:つげ義春ワールドの極点「ねじ式」に始まる”夢の作品群”と、それと並行して書かれた若い夫婦の生活を描いた”日常もの”を集大成。
    • 解説:川本三郎氏
  2. 大場電気鍍金工業所/やもり
    • 表4:「大場電気鍍金工業所」から「別離」まで、自伝的色彩が強く投影された作品9編を収録。少年時代から青年時代までの貧乏と悲惨を、著者独特のユーモアを交えて描く。
    • 解説:赤瀬川源平氏
  3. 李さん一家/海辺の叙景
    • 表4:漫画の歴史を変えた、つげ義春『ガロ』の結節点!後続の作家に大きな影響を与えた「沼」「李さん一家」など十八点を収録。
    • 解説:夏目房之介氏

このほか、各巻とも解説の他に、高野慎三さんによる「解題(書物の著者・成立の由来・内容・出版年月などについて解説すること)」が掲載されています。高野さんは、編集者としてつげさんに惚れ込み、月刊漫画雑誌『ガロ』の編集にも携わった人です。それだけに、解題だけでも非常に読み応えがあります。

解題に続いて解説があるのですが、これも執筆者をご覧いただければお分かりの通り、いずれも有名な評論家・作家の方ばかりです。小説の解説とはまた違って、解説者によって、読み解きであったり、分析であったりそのスタンスは様々。とても興味深く読むことができます。

そしてなにより、つげさんの漫画。表題作を中心に、ほかのどの漫画にも似ていない、独特で印象的な作品ばかりです。たとえば2巻の「大場電気鍍金工業所」は、つげさんが鍍金(めっき)工場で働いていたときの話。主人公は貧しく、労働環境劣悪な中で働いています。こうした舞台設定だと、人間の醜さだとか、社会問題だとか、重いテーマになる場合が多いのですが、主人公の飄々とした日常が描かれているだけです。
作品を語る際、テーマやオチなど、含意を話題にする人が多いですが、つげさんの漫画は、そうした理屈を超越しています。よくできたイメージビデオを見ている感じ、とでも言えばよいのでしょうか。一貫して流れるような話です。3巻の「海辺の叙景」などその典型で、若者の日常生活をただ切り取っただけで、始まりも結末もないような感じに見えます。けれども、とても印象的なコマ割りと台詞によって、登場人物の思いがしっかりと胸に残るのです。実に不思議な作品と言わざるを得ません。

手塚治虫さんも後続の作家に多大な影響を与えたと言われますが、つげさんも同様です。漫画の可能性を大きく広げた人として、おそらく後世まで語り継がれることでしょう。

このシリーズはあと、全9巻、今年6月まで刊行される予定です。1月の配本はもうすぐ。とても楽しみにしています。

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