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2009年2月 9日 (月)

バカ社長論

「バカ社長論」山田咲道著(日経プレミアシリーズ)

「バカの壁」という本が、文字通り「バカ売れ」してから、「バカ」をタイトルに冠する本が増えたような気がします。実際このブログでも、「バカ日本地図」「バカ親、バカ教師にもほどがある」といったところを取り上げました。確かにインパクトのある言葉なのですが、諸刃の剣です。タイトルとして成功する例は少ないのではないでしょうか。

けれども本書は、数少ない成功例の一つだなあと思いました。タイトルの「バカ」に必然性があるのです。

本書の著者の山田さんは、会計事務所を経営する社長。本書の冒頭「プロローグ」にて次のように述べています。

十五年前の平成五年八月に、独立開業して社長になったばかりの私は、絵に描いたようなバカ社長でした。社長はエラいんだ、自分は優秀でなんでもできる、社員は自分が食わせてやっている、社員は社長の言うことを何でも聞くべきだ、お金を稼げば幸せになる──などと信じていました。今ではそれらが若気の情熱の至りで、すべて間違っていると悟りました。会社は、社員と社会から生かされていること、そして社長は会社の歯車の一つに過ぎないことを理解しました。

太字の部分は、以前ご紹介した「日本でいちばん大切にしたい会社」の主張と同様です。ここを読んで私は本書の購入を決めました。「他ならぬ自分自身がバカ社長であった」という表明は、なかなかできるものではありません。これが冗談やポーズでないからこそ、本書が書けるのでしょう。
社長が「社長のあるべき論」を展開し、それができない、分かっていない社長を「バカ」と評するわけですから、ゆるぎない信念と実践が必要となります。「○○な人はバカ社長」と書くためには、自分は絶対に「それ以外」でなければならないからです。以前、漫画家が他人の漫画を批評した本を紹介しましたが、それに似ているかも知れません。

著者の山田さんの覚悟は、それだけではありません。第4章の「お金を儲ける算数・初級編」において、見積の極意をこのように書いています。

相手のフトコロ具合を読んで、誰がどのくらいの時間、工数をかけて行うのか原価計算します。大まかな内容で、かつお客さんのことがなにも分からない場合は、利益をたくさん乗せて、高い金額で返事をします。相手のフトコロ具合は、金持ちの会社と貧乏な会社では違います。原価が五万円であれば、金持ちの会社には十万円、貧乏な会社には七万円で出します。これが商売の醍醐味であり、両方ともに七万円で出しては、面白くありません。

これを読んで私はのけぞりました。確かに考え方は分かりますが、山田さんも会社をなさっているわけですから、こんなことを書いたら本業に影響しないのかなと思ってしまいます。ですがそうした心配にも「仕事の内容に自信を持っていますから問題ありません」と、さらり。なんという自信でしょう。私もついて行きたくなりますconfident

こんな調子で、本書では、社員の意欲の引き出し方ヒット商品に潜む陥穽社長の正しい考え方などについて具体的に書いています。山田さんは、独立して会社を興す前は、監査法人で働いていたと言うことですから、おそらくたくさんの経営者の方とお会いになったのでしょう。本書で「バカ」と指摘されている事例は、ご自身の経験だけでなく、そうした業務で見聞きした事例も含まれているはずです。ですから、事例の一つ一つにリアリティがありますし、だめな管理職についても言及しています。

さて一方読者ですが、「いるいる、こんな人」とか「うちの社長もこんなだよ」と思われる人もいるでしょう。もちろん、そうした読み方を否定はしませんが、それでは飲み屋で同僚と交わす愚痴と同じです。本書を「もし自分が社長だったら」と置き換えて読んでみたらどうでしょうか。現在のあなたの仕事ぶりが、まさに「バカ社長」そのままではありませんか。結局のところ、山田さんは、そう言いたくて本書を書いたように思えてなりません。自らの働き方と生き方を問い直す、そんな一冊です。

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