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2009年2月23日 (月)

人についての思い込み1

「人についての思い込み1 悪役の人は悪人?」吉田寿夫著(北大路書房)

近頃は10代後半向けの本が充実していると感じます。一昔前までは、学習関係の内容が中心だったと思いますが、最近は、進路・人間関係・メディア理解など話題も様々です。このブログでも途中から「ハイティーン向け」というカテゴリを作成しました。

本書もそのうちの一つ。他のハイティーン向け書籍と同様、分かりやすく、大人の自分にとっても非常に参考になりました。

本書の内容を、もし一言で表すとすれば「人は過度に思い込む動物なので、人を判断するときは今一度よく考えてみよう」というようなことになるでしょうか。とはいえ、いきなりこんなことを言われても、納得はできませんよね。本書のポイントは、例示の巧みさと具体性説明の丁寧さにあります。

まずは目次をご紹介します。

序章 この本に書いてあること&この本をぜひみなさんに読んで欲しい理由
第1章 私たちの行動を左右するものは?
第2章 性格や能力の影響を重視しすぎる決めつけた考え方
第3章 なぜ&どのようにして、決めつけた考え方をしてしまうのか?
終章 では、どうしたらいいのか? 読者の皆さんへ心理学者からのメッセージ

序章は、読者が「自分は決めつけた考え方をしている」と認識するための章です。巧みなアンケートによって、まんまと著者の術中にはまります。その上で、第1章と2章で私たちの「決めつける考え方」について説明がなされるわけですが、この手法が非常に良くできていると思いました。
Hito_2 1章と2章の構成を単純化すると左図のようになります。例示や演習の数は実際と異なるのですが、ポイントは、1章と2章が連携してまとめを構成している、という点です。第1章でのまとめを、第2章でさらに一般化してまとめる、という構成になっているために、それぞれの章で紹介されている心理学実験やよくある葛藤場面とその解説が、よりよく理解することができます。さらに例示や解説の後に、「課題」といって立ち止まる場面が設定されているのもユニークです。例示や解説について、自分なりに考えることができるようになっています。たとえば「ミルグラムの実験」という衝撃的な心理学実験の説明があるのですが、これに対して次のような課題が設定されています。

課題1
 ミルグラムの実験の方法を、友だちや先生、家族の人などに話して、結果を推測してもらったり、結果を教えて感じたことについて話し合ったりしてみてください。

著者の吉田さんが、これほど丁寧な解説方法を採用されたのは、おそらく、本書の内容が分かりやすいからこそ誤解されたくない、単純化して理解されたくない、ということだろうと思います。本書の「思い込まない、決めつけない」という主張自体を「思い込む」可能性があるからです。何しろ読者は思い込む傾向がある人ですからねcoldsweats01。実際吉田さんは、本書の随所で読者が思い込まないように注意書きを書いています。

実は、本書を最初に手にしたとき、「うへぇ、横書きか」と思いました。どうも私は横書きの本が苦手なのです。心理学には強い興味を持ちながらも、これまでほとんど読んでこなかったのは、横書きの本が多いからかもしれません。しかし本書は、例示の巧みさに引き込まれ、一気に読んでしまいました。ハイティーンのみなさんはもちろん、中学校や高校の先生には、ぜひご一読いただきたいと思います。強くお勧めしたい一冊です。

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