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2009年2月16日 (月)

ハカタ語会話

博多華丸・大吉式 ハカタ語会話」博多華丸・大吉編/著(マイクロマガジン社)

全国の主要な駅や空港には、多数のお土産物屋さんの脇に、必ず書店があります。その品揃えの特徴は、移動の途中に軽く読める本、ビジネス系の本が中心、というのが基本です。さらに大阪や福岡など、キャラの立った地域では、「ご当地もの」とも言うべきサブカルチャー本が置いてあり、結構楽しませてくれます。たとえば、以前ご紹介した東京をからかった本は、伊丹空港で購入したものです。

今回ご紹介する本は、当然ながら福岡空港で購入しました。いわゆるタレント本かと思い、あまり期待はしていなかったのですが、予想外に良くできた本でした。

まず、標題にもある「ハカタ語」という言葉について、著者の博多さんは次のように書いています。(若干?な表現もありますが本文ママで記載しています)

この本は、僕たち博多華丸・大吉が、生まれ育った福岡の言葉、博多弁「ハカタ語」の正しい理解と使い方を知ってもらうためのものです。(中略)いわゆる博多弁は、地域ごとに様々な違いがありますが、今回は福岡県博多区の博多部で使われる「博多弁」を基本にしています。同じく、本文中で解説している福岡の慣習や行事、食と福岡人気質なども、「リアルな今の福岡」に基づいています。

県外の人間には、福岡と博多の違いはわからないものの、地元の人にとっては、ちゃんと区別されるようです。このあたりの詳細は本書のコラムでも述べられていますが、要するに、博多区の若者たちが、今使っている博多弁を「ハカタ語」と称して、本書を構成した、ということなのでしょう。実際、博多弁の今と、習慣や文化がよくわかる構成になっています。

Kaisetsu_2 本書の基本は、左の写真のような感じです。特徴的なハカタ語を1語取り上げ、その単語が出てくる会話を示し、その解説を見開き2ページで構成しています。この構成のポイントは会話文。これが凡庸だととてもつまらないものになります。その点、博多華丸・大吉のお二人は、さすがに漫才師。会話を魅力的かつリアリティのあるものにするために、設定の工夫をしています。

まずは二人のプロフィール。華丸さんは、博多人形屋の跡取り息子で、生粋の博多っ子、大吉さんは、博多生まれだが10年間東京の企業で働き、転勤で博多に戻ってきた、という設定です。さらに、華丸さんには「ヒロミ」という彼女がいる設定が加えられています。これにより、東京との文化比較の話題がとても自然に交わされる上、恋愛やデート、結婚式など話題が多岐に広げることができるわけです。
こうした設定のおかげと、漫才のネタを作り上げる力と同様と思われる、会話創作力のおかげで、生き生きとした会話が展開されています。読んでいて勢いがあり、情景が浮かんでくるようで、とても楽しく読めました。

会話だけでなく、ページ右あるいは右下に配置してあるミニコラムも非常に面白いものばかりでした。「山笠の期間中はみんなキュウリを食べない。学校給食でも出ない」とか、「福岡においては『酒=日本酒』である」など、驚くものばかり。とりわけ「『きさん』は闘いのゴング」というコラムは、紹介されている会話文と相俟って、非常に印象的でした。平時と喧嘩状態の分水嶺が、相手を「きさん」と呼んだときだというのです。このあたりは、文ではなく、お二人の漫才で聞いてみたいと思いました。

通読してみて、博多弁はある意味日本語の典型の部分を明確に残していると思いました。劇作家の平田オリザさんは、日本語は、内輪の言葉として発達してきたと述べていますが、博多弁は、そうした「内輪性」をさらに進めた言葉のように思うのです。実際、著者の大吉さんも、あとがきでそのようなことを書いています。

やってみて、博多弁がこんなに濁すというか、オブラートに包んだ言葉だと気づかされました。僕ら芸人だけど、人を押しのけたり、前に出たりとかしないんですよ。その原因が意外とこんなところにあったのかなあ、と真剣に思いました。「まあ、よか」。前に出たら「つやつけとう」という風土で生まれ育ったわけですから。それは、決して悪いことではない。いいことだと思うんです。

普段使っている言葉でも、あらためてまとめてみると新たな発見がある、という指摘はとても重要だと思いました。

正直もうしまして本書は、誤植や誤記が散見され、「共通語」の訳語がおかしなところもあり、本作りに関してはずいぶん課題のある本です。それでも「博多を知ってもらいたい」「博多を好きになってもらいたい」という著者二人の思いは確実に伝わってきました。熱い思いは技術を超えるのです。
全国的に方言が失われていると聞きます。本書を参考に、「地元言葉会話」の本を作ったら楽しいのではないかと思いました。

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