« バカ社長論 | トップページ | ハカタ語会話 »

2009年2月12日 (木)

信用偏差値

「『信用偏差値』あなたを格付けする」岩田昭男著(文春新書)

数年前まで「電子マネー」などといっても、おそらく大半の人は「何それ?」状態でした。それが現在では、首都圏や近畿圏に住む多くの人が持っています。切符を買うことなく電車やバスに乗れるようになり、駅の売店でも使えるようになったからです。

かくいう私も電子マネーを4枚持ち、使わない日はない、というくらいよく使っています。けれども本書の著者の岩田さんは、この便利な電子マネーが無くなるかもしれない、と言うのです!

岩田さんは、「はじめに」でこのように述べています。

我々の社会では、ものすごいスピードでマネーが変貌し、それが単なる決済手段の枠を超えて、生活から社会全般にわたるまで、予想もできない重大な影響を与え始めている。

電子マネーに限らず、いま「マネー」には、大変革が起こりつつあると言うのです。そういえば、一口に電子マネーと言っても、ずいぶんたくさんの種類があります。スイカ・パスモ・エディ・ナナコ・ワオン・iD・クイックペイ(ちなみにこれらすべてATOKでアルファベットにも変換できます)などなど。かねがね「なんでこんなたくさん種類が」と思っていましたが、本書を読んで疑問が氷解しました。これらが登場した経緯や特徴、お勧めの使い方まで書いてあります。

ちょっと前まで、キャッシュレス決済といえば、クレジットカードでした。私は本書を読むまで、この両者の関係はてっきり良好だと思っていましたが、実は必ずしもそうでもないことがわかりました。それは、金融業以外からの参入ということがポイントです。確かに、スイカ・パスモは、電車会社、ナナコ・ワオンは、大手スーパー、iDは携帯電話会社が発行しています。これは何を意味するかというと、大手企業なら国に変わって貨幣が発行できるということに他なりません。このことは、クレジットカード会社を事実上運営する金融機関はもちろん、それを監督する国にとっては大問題です。

国にとってもう一つ頭が痛いのが、多くの小売業が導入している「ポイント制」。家電量販店が開発したと言われるこの手法が、今では多くの会社に波及しています。顧客をつなぎ止めるのに有効と言うことで、いまでは、来店するだけでポイントが付く、というサービスを始めたところも出てきました。このポイントもそのお店では、貨幣と同じように機能します。さらには、ネットゲームでアイテムを購入するポイントが、リアルなお金でやりとりされるようになってくると、もはやそれもお金と考えざるを得ません。貨幣発行先がどんどん増えているのです。

このように、電子技術の発達によって、貨幣のあり方が今、大きく転換している、と岩田さんは言います。このまま無秩序に広がってはまずいと考える監督官庁と、立場を奪われまいと考えるクレジットカード会社の連合軍が、今「信用偏差値」とも言うべき武器を持って、電子マネー・ポイント業界に攻め入ってきているようなのです。
この「信用偏差値」の制度は、簡単に言えば、その人の借金返済能力を点数化し、企業や役所がそのデータを共有するということです。ローンを組むときはもちろん、家を借りるときや電話の契約にも、このデータが企業間で共有されるので、「あなたの偏差値では、このアパートは貸せませんねえ」ということが起こりうるわけです。

「そんなの冗談じゃないよ」と思いますよね。私もそう思います。しかしアメリカでは、すでに20年も前から「クレジットポイント」という制度が普及しているのだそうです。企業にとっては貸し倒れリスクが軽減される一方で、金持ちはより優遇され、貧乏人はより貧しくなっていく、という社会の固定化が進むというデメリットがあります。それなのに、日本の金融庁は、こうした制度に前向きであると岩田さんは言います。

ですから「こうした制度にならないようにしよう」、そして、「もしなってしまうようなら今からこのように対応しておこう」というのが本書の論旨です。ライフスタイルに合ったクレジットカードの使い方など、具体的に説明されてます。IT時代のお金と言うことについて、ご興味のある方はぜひお読み下さい。

|

« バカ社長論 | トップページ | ハカタ語会話 »

ビジネス書」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/45933371

この記事へのトラックバック一覧です: 信用偏差値:

« バカ社長論 | トップページ | ハカタ語会話 »