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2009年2月26日 (木)

人についての思い込み2

「人についての思い込み2 A型の人は神経質?」吉田寿夫著(北大路書房)

タイトルと書影を見て、「あれ、前と同じ本?」と思った方もいるでしょう。しかし本書は別の本。前回ご紹介した本(以下「1」とします)の続編です。当初この2冊は、併せてご紹介しようと思ったのですが、それぞれ別の特徴があったので、2回に分けることにしました。

タイトルの通り、本書のテーマも、「1」同様「人は思い込みやすい」です。けれども、説明の軸が「ステレオタイプ」に置かれています。

吉田さんは、本書の冒頭で次のような質問で、読者を驚かせます。

この本の11ページを開いて、下のほうにある質問1に答えてください。制限時間はたったの3秒です。思いついた答えを、すぐに紙に書いてください。
(11ページ)
質問1 マラソンで前を行く3位の人を追い越したら何位ですか?
*答えたら、今度は、23ページに解答と解説が書いてありますので、読んでください。

23ページの解説文の最後には、「それではもとの5ページ、5行目に戻ってください」と書いてあります。なんだか意地悪のようでもありますが、こうした作業の発生する読書も悪くありません。それに、これは「本は最初のページから読み出すと思い込んではいけない」という吉田さんのメッセージではないか、と私は思いました。
さらに私が驚いたのは、「1」で紹介されていた「ミルグラムの実験」以上に衝撃的な心理学実験が紹介されていたことです。実際には異常がない人に、精神病と偽って精神科を受診させ何人が精神病と診断されて入院するか、入院したら何日で退院できるか、というとてつもない実験が行われたというのです。まだ実験の倫理観が確立されていない昔の実験だそうですが、それにしても、心理学者の「人間の心を解き明かしたい」という執念には驚かされます。

このような強烈な例を最初に読んでしまうと、なんだか人間の業の深さを認識させられてしまうBunkatu のですが、吉田さんはちゃんと解決方法を用意しています。まずは4分割表的思考です。左の表をご覧ください。「あるグループの人が○○だ」というためには、a,b,c,dそれぞれの人数が明らかにされている必要があるというのです。
吉田さんは、よく言われる血液型を例にして、具体的に説明しています。

血液型A型の人のうち、「神経質」と判定された人が32人いて、B型では16人しかいなかったとします。この結果から「A型の人はB型の人よりも神経質だ」と言えるでしょうか。

これを4分割表に当てはめれば、上記の例では、aとcの人数しか示していないので、答えは「言えない」ということになります。ところが私たちは、4つの数字どころか、数件の報道を耳にしただけで「少年犯罪は増えている」と感じたり、「中国製の食品は危ない」と考えたりしてしまうのです。吉田さんは、「問題なステレオタイプ」の例を他にも多数取り上げています。

こうした間違いに陥らないためのもう一つの方法として、クリティカル・シンキング(以下クリシン)という思考法が提案されています。ある考え方について「不適切な点はないか?」「他には考えられないか」と思いを巡らすことです。実はクリシンは、「1」でも紹介されていました。しかし私は、両方を読むことで、ようやく吉田さんおっしゃる「クリシン」を理解できたように思います。
本書は中高生向けに書かれたものですが、心理学素人の私にとっては、非常にためになりました。社員の評価や他社とのつきあい方など、仕事の面でもずいぶん役に立ちそうです。

Manga 最後に本書と「1」の特徴をもう一つ。それは効果的に漫画や挿絵が使われていると言うことです。このおかげで、ずいぶん理解しやすくなっています。読む方は楽ですが、編集の人はずいぶん苦労したことでしょう。

とはいえ、編集の立場から見ると、本書も「1」も課題が少なくありません。たとえばブックデザインは、もう少しなんとかならなかったのかなと思います。せっかくの内容が、生かし切れていません。註や但し書きが必要な本なのですから、頭注や脚注のつけやすい、縦書きのレイアウトを選ぶべきだったのではないかなあと思いました。

あ、横書きレイアウトが嫌いだから批判したわけではありませんよ。くれぐれも思い込まないようにお願いしますconfident

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