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2009年4月16日 (木)

デジタルネイティブ

「デジタルネイティブ 次代を変える若者たちの肖像」三村忠史・倉又俊夫・NHK「デジタルネイティブ」取材班著(NHK出版生活人新書)

本書は、2008年11月10日に放送されたNHKスペシャル「デジタルネイティブ~次代を変える若者たち」をもとに、番組で紹介できなかった取材内容を加筆して書籍化したものです。残念ながら私は番組を見ていないのですが、ご覧になった方から、本書が出版されていることを聞き、読んでみることにしました。

一読して感じたのは、巷間言われていた「インターネットがもたらす革命的変化」は、技術によってもたらされるのではなく、技術を理解し、駆使でき、享受した人によってもたらされるのだ、ということです。私たちは、まだ革命の端緒を見ているに過ぎない、と思えました。

三村さんは、当初「ロスト・ジェネレーション(失われた10年)」の時代に就職活動を行った世代を追いかける番組を企画する。世代を番組化するため、綿密に取材を重ねるうち、ネットをあたりまえに駆使する人たちがいることを知る。彼らを対象に番組化しようと思ったとき、頭をよぎった言葉が「デジタルネイティブ」。だがその言葉は、三村さんたちのオリジナルではなく、アメリカのハーバード大学では、すでに研究対象にさえなっていた。三村さんたちは、ハーバードへ向かい、ジョン・パルフレイ教授からデジタルネイティブの特徴を尋ね、日本の「ネットいじめ」について感想を求めると次のような答えが返ってきた。

  • デジタルネイティブは、インターネットの世界と現実の世界を区別しない。つまり「仮想空間」など存在しないのだ。情報は無料だと考えている。インターネット上のフラットな関係になじんでいるため、相手の地位や年齢所属などにこだわらない傾向がある。
  • 日本の「ネットいじめ」は現実の延長と考えるべき。子どもの心の闇がネットによって可視化されただけ。だからネットを遮断しても全く意味がないだろう。

このほか、ハーバードでの研究の成果が語られています。デジタルネイティブは、20年ほど前から現れた「パソコン少年」などとは根本的に異なり、ネットを通じて世界中とつながっているといいます。これはもう新しいタイプの人類が生まれつつあると考えた方が良さそうです。
次々と紹介される、デジタルネイティブたちの姿に、私はかなり圧倒されました。私も同世代の中では、ずいぶんネットを使いこなしている方だと思いますが、彼らの前では足元にも及ばないなあと思いました。

本書は番組を書籍化したものらしく、考察よりも事例が多数紹介されています。これがかなり説得力のある事例で圧倒されます。

  • オリジナルのカードゲームを販売するため、インターネットを駆使してデザイナーや販売代行会社等に業務を発注し、多額の収益を得る13歳の少年。
  • 社内の情報を、社員の個人情報も含めてすべてオープンにして、業務を遂行しているITベンチャー企業の社長。
  • ほとんど対面したことのない3人の高校生が、ネット上でウェブサービスを開発した。
  • ネット上に「国連」を作ろうとしている若者たち。収益ではなく「つながり」を目的にしている。
  • 西アフリカの内戦で少年兵だった少年が、ネットの教育利用を目指すNPOによって教育の機会を得るようになる

本当に、想像以上のことが、今まさに展開されているのだと思います。本書の他に、NHKのサイトで動画や「デジタルネイティブ検定」が提供されていますので、一度ご覧になってはいかがでしょうか。
高い知能を持った子どもたちが、ネットという道具を自然に身につけたとき、どんな社会を生み出して行くのか、半分不安になりながらも、半分は大いに期待が持てました。これからこうした小学生たちを受け入れて行く、小学校の先生にぜひお読みいただきたい一冊だと思いました。

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