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2009年4月27日 (月)

ネットじゃできない情報収集術

「ネットじゃできない情報収集術」漆原直行著(マイコミ新書)

仕事柄、会議の司会やインタビューをすることがよくあります。けれども私はいつも話を脱線させてしまうことが多いのです。「ああ、こんなことを話している場合じゃない、早く目的の話をしないと」と思うのですが、なぜか止められません。そして例外なく、自己嫌悪に陥ります。

しかし、本書はそれでいいのだ、と説きます。つまり、無駄足や脱線こそが情報収集にとって重要なのだと。

著者の漆原さんは、編集者。取材をしたり企画を立てたりする方です。まさに情報収集が必須のお仕事というわけで、実際に漆原さんが実践している方法を紹介しています。とはいえ、本書はいわゆるノウハウ本ではありません。書名が「情報収集術」となってはいますが、情報収集に関する考え方の本です。

情報収集は、目的ではなく、何かをするための手段である──当たり前のことですが、とかく見落としがちな意識です。(中略)情報をどう取捨選択し、そのうえでどのようなアイデアに結びつけていくか。それはすなわち、自分というフィルターに情報を通すことで、どのような付加価値を生み出していくか、ということにほかなりません。パソコンを使うだけの情報収集が「ただそれだけ」になりがちなのは、(中略)得た情報を自分なりに咀嚼したり、何かを生み出す作業をしていないからではないでしょうか。

情報は、収集するだけではだめで、自分というフィルターを通すこと」、つまり得た情報から何を考えたかということが大切というわけです。とはいえ、情報から自分なりの考えを導き出すというのは、そうそう簡単なことではありません。よく、大学生のレポートがWebサイトのコピーだらけ、と嘆く先生が少なくないと言われますが、これも考察を加えることが難しいからでしょう。

ではどうすれば考察が加えられるのか。漆原さんは、直接経験・無駄・遠回りなど、一般的なビジネス書では排除すべきである、と忌避されてきたことを、今一度見直してはどうか、と主張しています。これは、商品企画において現場主義を主張してきた私の考えと、非常に重なるものがありました。何かを調べようと現地に出向いたら、考えもしていなかった新たな情報が得られることがあります。反対に、調べようと考えた仮説自体が間違っていたことに気づいた、ということもあります。要するに、現場には宝物が一杯落ちているのです。これを拾わない手はありません。
本書では、漆原さんが編集者として経験した情報収集の様々な場面を挙げて、直接現場に出向くことや、無駄の効用を書いています。私の印象に残ったのは次の4点です。

  • 効率的な業務のための「仕事術」はほどほどに。手帳やノートなど、非効率的な道具の方が思考を助ける場合もある
  • とにかく雑誌はチェックする。特に女性誌は、ターゲットと中身が細分化されているので、情報理解には欠かせないメディアである。
  • 考えるために歩くのが大切。定期的な散歩でも良いし、通勤途中で遠回りするのも良い。歩きながら、考えが浮かぶことが多い。
  • インタビューの時、話題が脱線することや、インタビュー後の雑談は、取材対象の本音に迫れる良いチャンス。

かなり雑誌を読む私でも、女性誌やファッション誌は全く読まないので、それらの特徴についての解説や、ターゲットが5歳刻みくらいに設定されている、といった解説はとても興味深く読めました。あとは「仕事術」本のうさんくささは、私も感じていたので、「まあ、参考にする程度でよいのでは」という言い切りは、なかなか痛快でした。

むろん寄り道や非効率的な仕事をすれば、考えが深まるというものではありません。逆もまた真ではないわけです。けれども、ちょっと違った視点で仕事を見つめる、ということのためにはとても役立つ考えだろうと思います。私の脱線会議にも、効用が認められたという点でconfident、収穫のあった一冊でした。

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