« ICT教育のデザイン | トップページ | 拝啓十五の君へ »

2009年5月 7日 (木)

英語をやっていて、本当によかった。

「英語をやっていて、本当によかった。 吉越流ビジネスマンのための英語塾」吉越浩一郎著(WAC)

著者の吉越さんは、2006年まで外資系女性下着メーカートリンプ日本法人の社長を務めていた方です。幹部社員を早朝に集め、大量の案件をものすごいスピードで決裁して行く「早朝会議」で有名でした。在任中は19期連続増収増益だったことから、ビジネス雑誌や番組で何度も取り上げられていたので、ご存じの方も多いことでしょう。

その吉越さんが、「よかった」という英語とは? 私自身、英語学習の必然性はないのですが、その中身を知りたくて読んでみました。

一読して、本書のサブタイトル「吉越流ビジネスマンのための英語塾」や、帯に書いてある「英語再勉強法の決定版!」というのはふさわしくないと思いました。読んで価値がない本と言うことではありません。本書のポイントが、外国、特にヨーロッパのビジネスマンは何を重視し、どのように行動するのか、ということなのです。ですから、私がもし本書のサブタイトルを付けるとしたら
「外国語習得によって見えてきた、ビジネスノウハウと組織論」
という感じになるでしょうか。

吉越さんは、ドイツの大学に留学し、そこでフランス人の奥様を見つけ、日本の大学を卒業後、ドイツの企業などに就職します。そのドイツ企業の香港法人に赴任した時、英語の必要性を感じて勉強を開始したのだそうです。とはいえ、外国語を身につけたことのない私からすれば、「ドイツ語を身につけていたら英語なんてちょろいんじゃないの?」というのが率直なところでした。しかし、本書を読み進めるうちに分かったのは、海外旅行で必要とされるレベルの英語と、ビジネスで使う英語は全く次元が違うと言うことです。そして必要なことは、正しい発音よりも、正確に伝える力、つまり文法の知識とロジック(論理力)だといいます。この2点は本書で繰り返し述べられています。このうちフランスの教育に関する記述がおもしろかったので引用します。

妻から聞いた話ですが、彼女の大学入学資格試験(バカロレア)での哲学の問題は「何ゆえに動物は言葉を話さないのか」というものだったというのです。(中略)
私は息子をフランスの学校に通わせていましたが、(中略)毎日テキストの2ページ、3ページ分にわたることを徹底して暗記させられていました。それは哲学者、科学者、歴史家の言葉など多岐にわたり、暗記した後は、その素材を使って理論構築することを繰り返し練習させられていました。「小学校で、こんなことまで!」と思いましたが、これがフランスの教育なのでしょう。だからこそ「何ゆえに動物は言葉を話さないのか」という入試問題が出ても、誰も不思議に思わないのだろうと思います。

ヨーロッパのビジネスマンには、こうした背景があるのだから、彼らと上手にコミュニケーションするためには、ロジックを身につけなければならない、という主張はまさに「論理的」でした。また、ロジックは、交渉相手に発揮するばかりでなく、部下に仕事を指示する時、同僚に説明する時にも必要である、と書いています。これらは、英語を学ぼうとする人だけでなくても重要な考え方だと思いました。

そのようにロジックの大切さを説く一方で、その限界にも言及しているのが本書の素晴らしいところです。

欧米人のロジックは素晴らしい。しかしそれだけである。すぐれた企業は、ロジックの上を考えている。ロジックを超えたことをしようとするから、日本のサービスは伸びてきた

と、吉越さんは言います。「常識的に考えて、無理だ」と判断できる場合「だからやらない」というのがロジック。けれども「なんとかしてみましょう」というのが、すぐれた日本企業の特徴だというのです。あらゆるスキルやメソッドがそうですが、一本足打法ではだめだということでしょう。とても参考になりました。さらに、外国籍企業というだけで、日本人同士でも英語で会議を行う愚を指摘するなど、非常に合理的なマネジメント手法を紹介しているのも印象的でした。

けれどもこうした客観的な視点が持てるのも、外国人とコミュニケーションできる言語力と、ロジックを身につけているからこそです。そういう意味で、ビジネスマンが何か一つ外国語を身につけることは重要なのだなあと実感しました。

|

« ICT教育のデザイン | トップページ | 拝啓十五の君へ »

ビジネス書」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/45933398

この記事へのトラックバック一覧です: 英語をやっていて、本当によかった。:

« ICT教育のデザイン | トップページ | 拝啓十五の君へ »