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2009年6月 4日 (木)

予想どおりに不合理

「予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」」ダン・アリエリー著/熊谷淳子訳(早川書房)

すでに多くの雑誌やサイトで書評が書かれているので、本書をご存じの方も多いでしょう。私も書評で知り、すぐに購入したのですが、ちょっと読むのが遅くなりました。
読み終えた今の感想は、書名に反して「予想どおりにおもしろかった」です。なぜもっと早く読まなかったのか後悔しました。

本書は、サブタイトルにもある通り「行動経済学」という分野の本です。経済学というのは、こういう場面で人や企業はこう動く、という理論を背景にしています。けれども、人間はそう合理的には動かないよ、というのが著者のアリエリーさんの主張です。書名の「予想通りに不合理」というのは、従来の経済学に対するアンチテーゼでしょう。まことにうまいネーミングです。

うまいのはネーミングだけではありません。本書は全部で13章からなっているのですが、それぞれの話題ごとに、非常に具体的で印象的な事例が紹介されています。まず第1章の「相対性の真相」で示されている事例を紹介しましょう。

  1. Web版新聞の購読……59USドル(年間)
  2. 印刷版新聞の購読……125USドル(年間)
  3. 印刷版+Web版新聞の購読……125USドル(年間)

こんなラインナップだったら、あなたはどの新聞サービスを選ぶでしょうか。MIT(マサチューセッツ工科大学)の学生100人に、どのサービスを購入するか上記から選ばせたところ、
 :16人 :0人 :84人
だったそうです。ところが同じ学科で別の学生100人に、上記リストから2を除外して選ばせたところまったく違う結果になりました。
 :68人 :32人
2の「印刷版のみ」という「おとり」があったことで、3のサービスが「相対的に」有利に見えたため、多くの人がそれを選んだ、とアリエリーさんはいいます。確かに私もまんまと「おとり」にやられました。私たちは、選択肢を与えられた時、比べやすいものを比べ、それ以外の要素は無視するようにできているのだそうです。考えてみれば、世の中にはこうした「おとり」がずいぶん設定されているなと思いました。

本書はこんな具合に、私たちがいかに「不合理な」判断を繰り返して生きているか、ということを様々な角度で解説しています。たとえば第2章「需要と供給の誤謬」では、規格外で商品にならなかった「黒真珠」がいかに高級宝石として位置付いたか、という事例、第3章「社会規範のコスト」では、腕によりを掛けて料理を作ってくれた友人の奥さんに「で、代金は?」と質問したら激怒されるのはなぜか、という事例などが紹介されています。私にとっては、どれも「なるほどなー」と、うなってしまうものばかりでした。

アリエリーさんの主張は、第13章にある次の言葉で集約されると思います。

わたしたちはたいてい、自分が舵を握っていて、自分がくだす決断も自分が進む人生の進路も、最終的に自分でコントロールしていると考える。しかし、悲しいかな、こう感じるのは現実と言うより願望──自分をどんな人間だと思いたいか──によるところが大きい。

そして、こうした現状認識の誤りが、数々の失敗を生み出す、と言うのです。さらに、そうした失敗をする前に、自分たちの失敗しやすいパターンを知り、思慮深く行動しよう、と提言しています。

生き方や仕事の参考になる、本当にためになる本でした。人の行動や考え方について興味のある方には、ぜひおすすめしたい一冊です。

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