« きみが選んだ「死刑のスイッチ」 | トップページ | のぼうの城 »

2009年6月15日 (月)

ザ・小学教師

「ザ・小学教師」別冊宝島編集部編(宝島SUGOI文庫)

いまから20数年前「ザ・中学教師~不思議の国の中学校に棲息するセンセイたちのありのまま」という本が発売され、ベストセラーになりました。かくいう私も持っています。当時は校内暴力の嵐が吹き荒れ、大きな社会問題となっていました。

それから20数年経過して、事態はどうなったか…。問題の低年齢化が進み、いまや小学校が大変な状況だ、と本書は書いています。

Chugaku_kyoshi 本書を読み終えた後、本棚から黄色くなった「ザ・中学教師」を引っ張り出して読み直しました。当時は、「こんな先生いるかなあ?」とか「今の中学生はこんな状況!?」とずいぶん驚いたものですが、今の感覚では「昔はのどかだったなあ」というのが正直なところです。この本は、「変な先生とませた生徒」が話題の中心であり、書籍全体が、まあ一種のエンターテインメントのような作りになっています。

けれども本書は違います。前作のような笑いはありません。深刻な話題がほとんどです。企画意図を記した前書き部分を少し引用してみましょう。

学級崩壊、イジメ、児童の不登校なども問題が多くの小学校で日常化しています。(中略)軽度発達障害児童の増加という厄介な問題も発生しています。さらに、児童虐待、教育環境の格差、日常化したクレームの他、保護者に関する新たな難題が、火に油を注いでいたりもします。では、そうした諸問題に日々直面しなければならなくなった現場教師側の表情はどうなのでしょう? 孤軍奮闘するあまり精神を病む教師の数は年々増加傾向にあり、うつ病はもはや彼らの職業病のひとつとさえ言えそうな暗澹たる状況です。

本書では、この前書き部分で触れられた「学級崩壊」「イジメ」「不登校」「軽度発達障害児童の増加」「児童虐待」「教育環境の格差」「保護者からのクレーム」「教師のうつ」といった問題が、現場に取材した上で語られています。多少の誇張はあるにせよ、ここに記載されたのは、まぎれもなく事実です。本書の編者である、宝島編集部は、本書の企画意図を次のように書いています。

こうした子どもの問題について、多くの人に考えて欲しいと思っています。そのためには、現在の小学校のありのままの状況を知ってもらうことが大切と考えました。それが本書の目的です。

確かに、考えるためには知ることが大切です。私自身、仕事で教育現場を訪問し、発達障害や不登校については、何度も見聞きするうち、それが普通であるかのような感覚になってしまっていました。本書を読んで、そのことに気づかされました。また、虐待や貧困の問題、新興住宅地に見られる環境格差の問題などは、私が存じ上げている幾人かの先生から、具体的に聞いてはいたものの、ここまで一般化した問題とは知りませんでした。本当に、小学校の先生は大変なのだなあと思います。

とはいえ、本書は暗いばかりでもありません。冒頭の第1章に「岡崎流・テキトウ教育のススメ」というインタビュー記事があります。これは、愛知県の現役教師である、岡崎勝さんが「先生方、そんなに頑張らないでやりましょうよ」と語っている記事です。何も「怠けよう」という主張ではありません。非常にポジティブな「テキトウ教育論」です。この部分は、先生向けの記事と言えるでしょう。
そして最後には民間人校長の奮闘の様子が語られています。民間のノウハウを導入すれば、OKというような論調は、正直?でしたが、企業のマネジメント手法を使えば、教師の仕事が職人技からチームプレーに変化できる、という主張には納得できました。

本書は、ただでさえ大変な先生方には、まったくお勧めできる本ではありません(たぶん)。けれども小学校のお子さんを持つ親には、ぜひお読みいただきたいと思います。そしてこれらの問題を、先生と一緒に考えましょう。

|

« きみが選んだ「死刑のスイッチ」 | トップページ | のぼうの城 »

教育書」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/45933411

この記事へのトラックバック一覧です: ザ・小学教師:

« きみが選んだ「死刑のスイッチ」 | トップページ | のぼうの城 »