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2009年7月30日 (木)

父親次第

「父親次第」高木豊:著(日経プレミアシリーズ)

以前の読書は、非常に偏っていました。過激なイメージの論客や、タレントやスポーツ選手、女性ファンの比率が非常に多い作家の本は、全く読む気がしなかったのです。このブログを始めてから、「そうした著者」の本にも手を出すようになりました。読んでみると意外と面白かったからです。
そうした考えから、書店で本書を手に取りましたが、正直「野球選手が子育て論?」と思いました。しかしその考えは、すぐに打ち破られます。

元プロ野球選手が「子育て論」だって? そんな疑問の声が聞こえてきそうです。それも当然だと思います。プロ野球選手ほど家庭を顧みる時間の少ない職業はないからです。

これは本書の冒頭の3行です。つまり、私が書店で感じたことをすでに著者の高木さんは、見透かしていたのです。プロ野球風に言うなら「読んでいた」のでしょう。さすがです。こうした「読み」がなぜ可能になるかと言えば、鋭い観察眼のおかげでしょう。現役時代の高木さんは、対戦相手の投手の癖を、事細かに調べ、その上で対策を練ったそうです。
本書においてもそうしたやり方が、遺憾なく発揮されていると思いました。子どもたちをよく見ていることはもちろん、所属しているチームの運営と指導法、チームのメンバーとその保護者など、実によく観察し、分析しているのです。

本書の表紙にある通り、高木さんのお子さんは、3人の息子。しかも、3人ともその年齢では一流のサッカー選手です。野球選手の息子がサッカー選手というのは、一般的には珍しいことかも知れません。しかし、高木さんの観察眼にかかれば、それはまさに必然なのです。それが、具体的にどう必然なのかは、ぜひ本書をお読みいただくとして、私が最も強く感じたのは、自分はこれほどまでに子どもを見ているかなあと言うことです。

私は、一般的な父親としては、育児をきちんとやってきた方ではないかと自己評価しています。けれども高木さんほど子どもにきちんと向き合い、ちゃんと見てきたかと言われると、全く自信がありません。高木さんが「見る」ということについて、どれほど強くこだわっているかがうかがい知れる部分が、あとがきにあるので以下に要旨をまとめてみます。

親が子どもを守るという。しかし、子どもをペットのようにいつも自分の近くに置き、親の言うことを聞く子にすることが「守る」ではない。守るとは、見守ることである。子どもは毎日見守っていると、特徴や状態がよく見える。毎日観察していれば「おや、今日はいつもと違うな」と精神状態が見えてくる。子どもは、言葉にしなくても心のサインを必ず出す。それを見逃さないことだ。

いかがでしょうか。打者が相手投手の癖を見抜き、打ち崩そうとしている姿に似た迫力がある文章です。この視点に、私は何度も「なるほどなあ」とうなってしまいました。

とはいえ、失礼ながら高木さんの文章は、どちらかといえば下手な方に入ると思います。冗長な表現も多く、内容も整理されていないところが少なくありません。なのに読ませます。納得できるのです。それは、高木さんの強い思いが原因でしょう。きっと「子育ては父親次第である」ということを多くの人に伝えたいのです。
つくづく文章とはテクニックではないなあと思いました。親として、新たな視点をもらった一冊でした。

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