« 父親次第 | トップページ | 教師になるということ »

2009年8月 3日 (月)

16歳の教科書2

「16歳の教科書2 勉強と仕事はどこでつながるのか」6人の特別講義プロジェクト&週刊モーニング編集部(講談社)

1年ほど前に、「16歳の教科書」という本をご紹介しました。「高校生は、なぜ学び、なにをどう学ぶのか」について、教科や学問のスペシャリスト(先生)が解説した「特別講義」でした。本書はその続編という位置づけ。「学校での勉強は、社会に出てから本当に役立つのか」が、テーマとなっています。

映画や小説もそうですが、続編には、がっかりさせられることが多いものです。本書を書店で見た時も、「1が売れたから、2が出たのね」くらいにしか思っていませんでした。ところが、前書きにあたる「開講の辞」を立ち読みしたら、一気に引き込まれてしまいました。この部分を、かいつまんでご紹介します。

16歳のきみたちにとって「社会」は、あまりにも遠いところにある。大人たちがどんなことを考え、どんなふうに働き、どうやって「社会」を動かしているのか、実際のところはよくわからない。大人たちは、口をそろえて「若い時にもっと勉強しておけば良かった」「だから、おまえは勉強しなさい」と言う。
だが、きみたちには「なぜ、もっと勉強しておけばよかったのか?」が、なかなか理解できないだろう。それは、多くの大人たちが、それを説明できるだけの言葉を持っていないからだ。そこで今回、社会の最前線で活躍されている6名のスペシャリストをお招きし、特別講義を行っていただいた。

「多くの大人たちは、若者に説明できるだけの言葉を持っていない」という文にうちひしがれました。確かに私自身、自分の子どもにさえ語りうる言葉を持っていません。
ではどうすればそうした言葉を獲得できるのでしょうか。本書の講師の方々の文章を読んで、それが、仕事への取り組み姿勢や苦闘の歴史に起因するのだと思いました。仕事に対して、必死に取り組み、悩み、努力し、真剣に向き合って考え抜くからこそ語るに足る言葉が生まれるのです。それを語っている講師は、6人。いずれも個性的な方々です。

  • ジャズシンガー 綾戸智恵さん 16歳のドアを開けよう-本当にスペシャルな存在になるために
  • 「サイゼリヤ」創業者 正垣泰彦さん 学校で身につける「教養」ってナンだ!?-お金よりも大切な「仲間」を見つけよう
  • 「渋滞学」研究者 西成活裕さん 「数学の力」は大統領にも勝る-凝り固まった「思考の渋滞」を解消しよう
  • 日産GT-R開発者 水野和敏さん シゴトも勉強も「恋愛」だ!-誰かのために生きることが、自分らしさにつながる
  • 映画監督 李相日さん 平凡な自分をどう受け止めるか-映画も人生も「ひとり」では完成しない
  • 占星術研究家 鏡リュウジさん 「クールな科学」と「ウエットな占い」って?-自分を知り、他者を知るための占い講座

どの方の文章(といってもおそらくインタビュー)も、非常に示唆に富んでいました。講師のみなさんがそれぞれ、学校の勉強だけでなく、親や先生、世間とのつきあい方について言及しています。当然ながらみなさん、まったく違うアプローチで。このうち、綾戸さんの「学校の勉強は『心の体育』」という部分が非常に面白かったのでご紹介します。

これはあとになってわかったんだけど、学校では、頭じゃなくて心を鍛えているのよ。嫌いな勉強や行事であっても、「学校でみんなとそれをした」という事実、時間、経験が大切なの。学校にいると「どうやってサボろうか」「どうやって先生に気に入られるか」とか、真剣に考えるでしょ。こういう知恵を働かすのも、広い意味で勉強なのよ。学校というのは、こうした生きるための「知恵」を育てていく場所。だから、辞めちゃうなんてもったいない。

学校も社会の一部だから、そこへ行くこと自体に意味があるのだというのです。こういう説明は私にはできないなあと思いました。

それにしても、前作のご紹介でも書きましたが、本書の編集は本当にすばらしいです。まず講師陣のラインナップ。もし私が編集者だったら、占い師の鏡さんに依頼するという発想は絶対に湧いてきません。しかし、国際基督教大学で心理学を専攻したという鏡さんを加えることで、厚みのある企画となっています。
次に文章の質。おそらく元はインタビューであろう本書の文章は、とても自然に文字化されています。会話を文字化たことのある人はご存じの通り、一般に音声言語は非常に冗長です。その上一流の方々の話は面白いので、要約にはかなりの技術が必要となります。本書にはライターさんの名前は書いてありませんが、よい仕事をされるなあと思いました。

高等学校の学習指導要領には、キャリア教育が正式に位置付いたと聞いています。そうした意味では、本書は文字通り教科書になり得るのではないかと思いました。

|

« 父親次第 | トップページ | 教師になるということ »

ティーン向け」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/45933431

この記事へのトラックバック一覧です: 16歳の教科書2:

« 父親次第 | トップページ | 教師になるということ »