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2009年8月27日 (木)

日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか

「日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか 児童精神科医の現場報告」古荘純一著(光文社新書)

このブログを読んで下さっている方の中で、特に小学校の先生と小学校低学年の子どもを持つ親は、ぜひ本書を読んで下さい。それもできるだけ早く。それだけ重要な内容が書かれていると私は思います。

本書のタイトルは「なぜ低いのか」ですが、内容の中心は「低いとなぜまずいのか」です。自尊感情が低いことによって引き起こされる様々な問題について、児童精神科医である古荘さんが、様々な調査研究を元に解き明かしています。

「自尊感情」という言葉は、英語の「Self esteem」の訳語です。自分を尊ぶ良い感情のように思いますが、高すぎても低すぎてもよくないとのこと。古荘さんは、子どもの自尊感情を測定するためQOL(Quality of Life)尺度という測定法を開発し、その尺度のうち自尊感情に関わる部分に着目して調査研究をされています。その結果、予想通りと言うべきか、不幸にもというべきか、小学校から高校まで、日本の子どもたちの自尊感情は、やはり突出して低いことがわかってきたのです。

結果を整理すると、まず小学校では、平均得点が低いことと、ゼロに近い子がどこのクラスにも2~3人はいる、ということが問題である。これは家庭に問題を抱えた子が非常に多いということを示している。中学校で平均点はさらに下がり、実業系の高校では、クラスの1/3が0点という衝撃的な結果となった。私立の進学校や都立で偏差値が高めの学校でも、平均は30点台と非常に低い。この傾向は、都市部農村部、学力の高低にはほとんど関係しなかった。

本書の3章を以上のようにまとめてみました。いかがでしょうか。私は大いに衝撃を受けました。自尊感情が低いと言うことはうすうす気づいてはいたものの、それは、学習困難校や都市部の学校特有のことだと思っていたからからです。本書では、さらに外国人はもちろん、在外日本人学校の子どもたちは、ここまで低くない、ということ、さらに、そうした子どもの親も、同様に自尊感情が低いということも示しています。こうなると、この低さは日本社会に問題があるのではないか、と考えざるを得ません。

そしてこの自尊感情の低さは、学力低下・生活習慣の乱れ・いじめ・虐待・不登校・非行などの原因になるといいます。たとえばいじめとの関係について、古荘さんは、次のように解説しています。

いじめる側は、自尊感情の低さを他者の自尊感情を低くすることに切り替えただけのことです。他者をいじめることで自尊感情を保つ。誰がいじめのターゲットになるかわからない背景には、子どもたちの自尊感情が総じて低いことがある

各地の学校で、学力向上や生活習慣の改善などが研究テーマとなっています。しかし本書を読むと、学力だけに着目しても向上は難しいということが分かります。本書を読む限り、著者の古荘さんは、小学校の現場の状況を正確にご存じのように感じました。小学校の先生方と接しなければ知り得ない情報が随所に書かれていたからです。それゆえ、本書で再々展開している「40人学級では多すぎる」という主張には説得力がありましたし、大いに賛成できました。

本書にはまだまだ紹介したい調査や考察がたくさんあります。それらはいずれも、日本の大人たちが子どもへの接し方を変えなければならない、ということを示しています。古荘さんが述べている接し方のポイントについて、その見出し部分だけご紹介します。「そんなの知ってるよ」と言わないで、どうかこれをきっかけに本書をお読みになることをお薦めします。

  1. 子どもの話に耳を傾ける
  2. 子どもの自尊感情・発達という視点を持つ
  3. まずはお母さんが、そしてお父さんも自己を肯定する
  4. 親の期待を押しつけず、子どもを肯定的に受け止める
  5. 子ども自身が目標、希望を持てるようにする
  6. 自尊感情は、低すぎず、高すぎず
  7. 規則正しい生活習慣の確立を
  8. 大人がみんなで子どもを育む社会を目指す

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