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2009年9月28日 (月)

13歳から学ぶ日本の貧困

「13歳から学ぶ日本の貧困 日本をむしばむ“貧困”が60分で見えてくる」宇都宮健児著(青志社)

日本の貧困問題については、以前阿部さんの「子どもの貧困」を紹介しました。同書では、政治の問題とともに、貧困に対する一般市民の認識の問題が指摘されていたことが印象に残っています。本書はおそらくそうした問題意識から企画されたものでしょう。貧困問題について、中学生でも考えられるように編集されています。

著者は弁護士の宇都宮さん。長年消費者金融の被害と闘い、いわゆるグレーゾーン金利の撤廃に尽力された方です。現在は東京大学で貧困を教えながら、「年越し派遣村」などの活動を支援するなど、反貧困の活動をされています。

タイトルに「13歳から」とあるように、本書は貧困問題が非常にわかりやすく説明されているのが特徴です。まず第1章「貧困ってどういうこと」では、貧困と格差の違い、貧困の定義を解説しながら、「社会に貧困があるとなぜ困るのか」を説明しています。この説明のために宇都宮さんが類型化した、「貧困に陥ってしまった人のその後」が次の4パターンです。

  1. 生活保護をもらって生活を立て直し、仕事を見つける
  2. 家を失い、路上で生活する(ホームレスになる)
  3. 自殺する
  4. 犯罪に走る

1や2については、中学生が自分の問題と捉えることは難しいでしょう。けれども、3や4になってくると、社会不安に結びつくだけに実感できるはずです。
本書では2のホームレスについては、第3章でかなり詳しく述べられています。3については、自殺者の数が、1998年から11年連続で3万人を超えていることや、自殺原因の23%が生活苦である、と解説し、4については、最近起こった経済的困窮が原因の犯罪事件を取り上げています。これを読むと、どこで起こるのかわからない犯罪を抑止するよりも、経済的困窮者を特定して支援する方が、社会不安を取り除くのに合理的だし経済的だということがわかります。まさに「情けは人のためならず」なのです。

そして第2章「貧富の差を広げる社会のしくみ」では、消費者金融の仕組みを軸に、借金の動機の多くが生活苦であることや、貧しい人ほど高額の金利を払わされているという矛盾した金融のからくりを解説しています。さらにいわゆる「貧困ビジネス」と言われる事業の実態も紹介されていて、貧困に陥るということが、本人の怠惰や努力不足によるものではないということが理解できます。このあたりは、宇都宮さん自身が、消費者金融問題に立ち向かってきただけに説得力がありました。

考えてみますと、私自身も中学校時代、先生から不良のレッテルを貼られ、希望する高校に進学できませんでした。高校で本格的にぐれていたら、どうなっていたかと今でも思います。つまり人生には運が作用する部分があるのです。ちょっと運が悪かったら、二度と立ち直れない社会では、私たちは安心して暮らせません。子どもたちも未来に希望が持てないでしょう。
だから貧困について、中学生の時から貧困について知り、考えよう、とよびかけているのが第4章「未来を生きるために考えなきゃいけないこと」です。ここでは具体的に行動を起こしている大学生の例などが紹介されていました。

こうした問題は、学校で取り上げるのはなかなか難しいことでしょう。なにしろ、OECDの調査によれば日本の貧困率は14%ですから、ほとんどのクラスに貧困家庭のお子さんがいることになります。教科書にあるならともかく、取り立てて話題にはしにくいはずです。けれども、私にはこれが社会不安の原因の一つになっていると思えてなりません。
宇都宮さんは、本書で「問題を見据えて自ら行動を起こそう」と呼びかけ、自らも実践されています。私もできることから始めて見ようかなと思っています。

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