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2009年9月 3日 (木)

考える心のしくみ

「考える心のしくみ カナリア学園の物語」三宮真智子著(北大路書房)

以前「人についての思い込み」という本を紹介しました。本書はその本と同じ「心理学ジュニアライブラリ」というシリーズの本です。これは中高生向けのシリーズではありますが、大人にとっても心理学への入門書になりうるのではないでしょうか。

本書が解説しているのは「本当の賢さとは何か」ということ。昨今教育界では、考える力とか、判断する力といった言葉が飛び交いますが、はたしてそれらは、どれだけ合意された言葉なのだろうかと思います。本書は、そうした議論の際、指針の一つになるのではないかと思いました。

「本当の賢さとは何か」ということについて、心理学的に解説する、というと、なにやら難しそうに感じます。おそらく著者の三宮さんもそのようにお感じになったのでしょう。それゆえ本書は、架空の学校「私立カナリア学園」が新設した「考える時間」という授業の様子という設定となっていて、この授業を担当するウラシマ先生と生徒のやりとりだけで展開します。
こうした設定が、想定読者である中高生にとって効果的なのかどうかは不明です。けれども、少なくとも私には、この設定が効果を発揮していると感じられました。たとえば、若干説教臭くなる「賢さについて考えること」の必要性を説く部分は、実際には三宮さんの言葉なのですが、熱血教師ウラシマ先生の言葉として語られることで、受け入れやすく感じられます。こうした説明の二重構造は、もしかすると、心理学的な裏付けがあるのかもしれません。

本書はおよそ次のような構成となっています。

  1. なぜ賢さを身につけねばならないのか
  2. 考えや判断を妨げているものは何か
  3. 日常生活をよりよく過ごすために必要なこと

このうち2.の部分が最も詳しいのは言うまでもありませんが、1.と3.でウラシマ先生が語る、賢さを身につける必要性は、かなり説得力がありました。1.も良いのですが、ウラシマ先生が1学期の終わりに語った3.の言葉の一部をご紹介しましょう。

すべてはひとりから始まる。たったひとりの考えが、最後には地球を救うことにつながっていくかもしれないんだよ。自国のエゴに走らず、目先の欲に目がくらむことなく、遠い将来のことにも気を配って、地球規模でものを考えることが必要なんだ。一面的な情報に惑わされず、自分とは異なる立場の人の視点からものごとを見直し、悪徳商法まがいのインチキ論法を見破り、決して情報操作にひっかからない。そんな本当の賢さが、自分を救い、それぞれの国を救い、そして地球を救うんだ。

ここだけ読むと、違和感を感じるほどの「熱さ」でしょう。けれども、本書の説明は、こうした熱さが当たり前と思えるほど上手になされています。

先日の総選挙、一面的な情報に惑わされず投票することができたでしょうか。買い物の際、インチキ論法にだまされはしなかったでしょうか。本書で提起している課題は、私たちの日常に、いつも問いかけています。

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